脱炭素向け事業を国内展開、シュナイダーエレクトリックが自社と顧客の知見生かし:製造マネジメントニュース
ビルオートメーションやプロセスオートメーションなどのグローバル企業であるフランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は2021年11月4日、日本市場向けに脱炭素化に向けたサービス事業を開始することを発表した。脱炭素化に向けた包括的なコンサルティングを行うエナジーサステナビリティサービス事業部門を設立し、日本での展開を加速する。
ビルオートメーションやプロセスオートメーションなどのグローバル企業であるフランスのSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は2021年11月4日、日本市場向けに脱炭素化に向けたサービス事業を開始することを発表した。脱炭素化に向けた包括的なコンサルティングを行うエナジーサステナビリティサービス事業部門を設立し、日本での展開を加速する。
脱炭素化への取り組み加速が企業の課題に
2020年10月に日本政府が表明した2050年のカーボンニュートラル達成と、2021年4月に策定した2030年の温室効果ガス削減目標(2013年比46%削減)の影響から、日本企業にとって脱炭素化は大きな課題となっている。一方で、その計測方法や削減目標策定、エネルギー消費の効率化など、多岐にわたる知見や専門知識の必要性から、全体的なコンサルティングサービスの必要性が高まっている。
シュナイダーエレクトリックはグローバルにおいてエネルギーマネジメントおよびオートメーション事業を展開しており、エネルギー管理の専門企業として自社内でのカーボンニュートラル化に積極的に取り組み、さまざまなノウハウを蓄積している。一方で、各種制御機器や電力関係設備、これらのデータ管理基盤などの展開により、グローバルにおけるさまざまな企業のエネルギー管理最適化のノウハウを保有している。新たに国内で展開を開始するESS事業はこれらの知見を生かして、日本企業の脱炭素化を支援するものだ。
具体的には「供給」「効率化」「サステナビリティ」の3つの視点で、戦略策定や具体的な施策の実施、ツールの活用など多方面の支援を行う計画だ。「供給」は電力調達の最適化で、再生可能エネルギーの購買支援や予算と実施のトラッキング、市場動向情報の提供などを行う。「効率化」は消費量モニタリングのツール提供や削減支援、アセスメントや省エネルギー施策の提案などを行う。「サステナビリティ」では、脱炭素化へのプラン策定支援やカーボンフットプリント、排出量管理や調達支援などを行う。
これらの1つの基盤となるのが、情報基盤となる「EcoStruxure Resource Advisor」だ。シュナイダーエレクトリックでは、産業などに応じ、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークやインテグレーションなどを最適な形で組み合わせたIoTプラットフォームとして「EcoStruxure」を展開している。これらのエネルギー関連に最適化したものが「EcoStruxure Resource Advisor」である。具体的にはプラットフォームおよびダッシュボード機能を持つ他、分析画面や請求書管理、購買管理、消費量トラッキングや排出量データの表示や管理を行うことができる。
ただ、シュナイダーエレクトリックでは脱炭素化の支援のために、「EcoStruxure Resource Advisor」を必ずしも導入する必要はないと訴える。「ESS事業が目指すべきところは、顧客企業の脱炭素化への取り組みを全体的に支援するコンサルティングサービスであり、自社のツールを売るためのものではない。あくまでも顧客にとってツールが必要であれば導入するが、他社のツールが最適であればそれも支援する。そういう中立性を確保した取り組みを進めていく」とシュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏は述べている。
「スコープ3」でのカーボンニュートラル実現も支援
また、脱炭素化に向けては、「自社での燃料使用や工業プロセスによる直接排出」(スコープ1)と「自社が購入した電気・熱の使用に伴う間接排出」(スコープ2)、「サプライチェーンや自社製品の生み出す排出」(スコープ3)などに区分けされているが、排出量削減に向け従来は視野に含まれていなかった「スコープ3」の削減が大きな課題となっている。こうした「スコープ3」への対応についてもシュナイダーエレクトリックは知見を提供できるとしている。
「スコープ3への取り組みが難しいという話は確かに聞いているが、グローバルでのさまざまな実績から削減できる枠組みなども生まれてきており、こうした知見を共有する。例えば、米国では小売り最大手のウォルマートが、スコープ3までを対象にした『Project Gigaton』を推進しており、シュナイダーエレクトリックはその支援にも入っている。こうした枠組み作りをどう進めたのかという知見なども共有できる」とシュナイダーエレクトリック エナジーサステナビリティサービス事業部 シニアセールスマネージャーの加藤道久氏は述べている。
さらに、白幡氏は「シュナイダーエレクトリック自身がカーボンニュートラル化に向けた取り組みを行っており、その知見も共有できる。シュナイダーエレクトリックではスコープ3の範囲で1000社程度の取引先があるが、これらの企業に支援に入り一緒にCO2削減に取り組むことで約9割の企業で50%以上の削減を達成した実績がある。こうした経験に裏打ちされた手法も合わせて提案していく」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IoTブランドとして強化、スマート&グリーンを訴えるシュナイダーエレクトリック
シュナイダーエレクトリックは2021年4月19日、日本向けの2021年の事業方針発表会を開催。「スマート&デジタル」をキーワードに、さまざまな業種におけるデジタル化と電力活用の効率化を推進していく方針を示した。 - シュナイダーエレクトリックが考える産業用IoTで成功するための2つの注意点
フランスのシュナイダーエレクトリックは独自のIoT基盤など産業用IoTへの取り組みを強化しているが、重点領域の1つとして産業用機械向けのIoTソリューションを展開。同社のマシンソリューション事業への取り組みとシュナイダーエレクトリックの産業用IoT分野における強みについて、シュナイダーエレクトリック インダストリービジネス マシンソリューションズのシニア・バイスプレジデントであるアリ・ハジ・フラジ氏に話を聞いた。 - 日立が脱炭素に取り組むきっかけは「コロナ禍が生み出した青空」
日立 執行役副社長のアリステア・ドーマー氏は、2021年11月に開催される「COP2」に協賛する「プリンシパル・パートナー」に同社が就任したいきさつを説明。「2021年の世界的なイベントとして東京オリンピック・パラリンピックに次ぐ2番目の規模となるCOP26が、地球環境の保全に向けた解決案を見いだすことに貢献したい」と述べた。 - トヨタが10年連続1位、国内企業の脱炭素技術特許出願ランキング
三菱電機は2021年9月21日、特許明細書から当該技術が脱炭素関連技術であるかをAIで判定する手法を、日本特許情報機構と共同開発したことを発表した。さらに同手法を用いて、脱炭素関連技術の特許出願企業ランキングを作成し、公開した。 - 脱炭素に向けた日本の自動車政策はどう進む、「欧州に追従する必要はない」
国土交通省と経済産業省は2021年5月19日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第5回の会合を開き、業界団体などを対象としたヒアリングの結果をまとめた。 - いまさら聞けない「CO2ゼロ工場」
「カーボンニュートラル化」が注目を集める中、製造業にとっては工場の「実質的CO2排出ゼロ化」が大きなポイントとなります。本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します。 - 「脱炭素」は製造業の新たな飯の種になるのか
自社の省エネだけではなく新たなビジネスを立ち上げられる可能性があります。