パナソニック1Q決算、13年ぶりの好結果も半導体不足や物流停滞で通期は慎重姿勢:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2021年7月29日、2022年3月期(2021年度)第1四半期(4〜6月)の連結業績を発表した。営業利益はリーマンショック以前の2009年3月期(2008年度)第1四半期以来の1000億円を超え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を色濃く受けた前年度同期からの回復ぶりを示した。
家電分野や電子部品分野で体質強化進む
さらに、業績改善が進んだ事業として、家電などを扱うアプライアンス(AP)セグメントでの取り組みと、電子部品などを扱うインダストリアルソリューションズ(IS)セグメントでの取り組みを紹介した。APセグメントでは、ポートフォリオ改革により、競争力のある家電などを中心に事業構成のシフトを進めた。また、構成比率の高い日本と中国において競争力のある製品投入を強化することで増益をけん引。特に中国では「2019年度第1四半期に比べて4割近い増収を実現した」(梅田氏)という。これらにより、調整後営業利益については大幅に伸長させることができている。
ISセグメントではコロナ禍でも順調に売上高を成長させることができている。「情報通信向けの需要拡大に加え、導電性高分子コンデンサー、蓄電システム、産業用モーターなどの販売が大きく伸びている」(梅田氏)という。さらに、半導体事業の譲渡や液晶パネル事業の縮小などにより、収益性の改善も進んだとしている。調整後営業利益も順調に成長しており、IS社の商材に限ってみると営業利益率は11.0%と1割を超える状況になったという。
収益性改善が求められてきたオートモーティブ(AM)セグメントについても前年から調整後営業利益が400億円以上改善するなど順調な回復ぶりを示している。自動車市況の回復による増販に加え、車載電池が需要増により大幅に収益改善が進んだ。テスラ向けの車載電池については「北米工場の生産ラインの増設を準備中。2021年8月中に稼働開始の見通しだ」と梅田氏は語っている。
不透明要素を慎重に見て業績予想は据え置き
これらの好調な状況があるにもかかわらず、2021年度通期の業績予想については、2021年5月時に発表した売上高7兆円、調整後営業利益3900億円、営業利益3300億円、税引き前利益3300億円、当期純利益2100億円という数値を据え置いた。
その要因として梅田氏は「情報通信インフラや工場省人化などISセグメントを中心に好調が期待できるプラス要因はあるものの、不透明要因が多く残ることから今回は慎重に見た。リスク要因としては、半導体の不足による自動車生産への影響や、港湾の混雑による物流の停滞、コロナ禍による工場のロックダウンの可能性、銅などの資材価格の高騰などが考えられる。全体としてこれらをコントロールしカバーするつもりではあるが、どれだけの影響が出るのかを読み切れないところがあるため、第2四半期までは見極めの時間とする」と語っている。
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