パナソニックが半導体事業を台湾Nuvotonに譲渡、60年の歴史に幕:製造マネジメントニュース
パナソニックは2019年11月28日、パナソニック セミコンダクターソリューションズ(PEMJ)を中心に運営する半導体事業を、2020年6月に台湾のWinbond Electronics傘下のNuvoton Technologyに譲渡することを決めた。
パナソニックは2019年11月28日、パナソニック セミコンダクターソリューションズ(PEMJ)を中心に運営する半導体事業を、台湾のWinbond Electronics(以下、Winbond)傘下のNuvoton Technology(以下、Nuvoton)に2020年6月1日に譲渡することを決めた。同社では不採算事業の整理を急いでおり2019年11月21日には、液晶パネル生産の終了なども発表している(※)。
(※)関連記事:パナソニックが液晶パネル生産を終了、中小型に注力するも市場環境の激化で
パナソニックの半導体事業は、AV機器などデジタル家電分野から車載、産業分野へのシフトを進め、イメージセンサーなどの「空間認識」技術、リチウムイオン電池保護回路用MOSFETなどの「電池応用」技術を注力分野と位置付けて、事業運営に取り組んできた。一方で、アセットライト化に取り組み2014年4月に北陸工場の半導体ウエハー製造工程をイスラエルの半導体ファウンドリ企業であるタワーセミコンダクター社との合弁企業に移管している。さらに2014年6月にはシンガポールとインドネシア、マレーシアにあった半導体組み立て工場を香港のUTACマニュファクチャリングサービシーズ(UTAC)に譲渡するなど、資産の整理を進めてきた。
しかし、半導体市場は競合関係の激化に加え、投資の巨額化、業界再編などが加速しており、今後の事業拡大のためには、新たな枠組みが欠かせない状況となっていた。2019年11月22日に「Panasonic IR Day 2019」で事業説明をしたパナソニック インダストリアルソリューションズ社(IS社)の社長である坂本真治氏は半導体事業について「さまざまなアプローチで方向付けを決める。2019年9月以降、赤字を大きく圧縮できているが、社外のパートナー含めてさまざまな可能性を考えていく」と述べていたが、今回事業譲渡を最終的に決断したことになる。
最終的にパナソニックが事業譲渡するNuvotonは、Winbond傘下の半導体製造会社で、ロジックICの研究、設計、開発、製造、販売と、6インチウエハーの製造、試験、OEMなどを行っている。資本金は73億5800万台湾ドル。
譲渡に向けては、やや複雑な処理を行う。パナソニックの半導体事業は、パナソニック100%出資の連結子会社であるパナソニック出資管理(PEMJ)の傘下に置かれているPSCSで運営されている。まず譲渡前にPEMJ傘下で半導体関連の設計、開発を行うパナソニック デバイスシステムテクノと、半導体関連の技術業務請負を行うパナソニック デバイスエンジニアリングを、PSCSに承継する。さらにPEMJが保有するPSCSの全株式を新たに設立する完全子会社「PSCS持株会社」に譲渡する。一方で、PSCSの半導体関連部品(リードフレーム)事業を会社分割により新たに設立するPEMJの完全子会社に承継させる。
これらの準備をへて、PEMJが「PSCS持株会社」の全株式をNuvotonに譲渡する。さらに、シンガポール法人のパナソニック アジアパシフィックで、半導体の開発や販売事業を担当する社内カンパニー「パナソニック デバイスセミコンダクターアジア(PIDSCA)」をNuvotonのシンガポール法人に譲渡する。また、パナソニック セミコンダクター蘇州の半導体事業に関係する設備や在庫などをNuvotonの中国法人に譲渡する。
パナソニックでは1957年にオランダのフィリップスとの合弁で半導体生産を開始し、60年以上の歴史を持つが、一部の部材を除いて事実上半導体事業から全面的に撤退することになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パナソニックが液晶パネル生産を終了、中小型に注力するも市場環境の激化で
パナソニックは2019年11月21日、2021年をめどに液晶パネルの生産を終了すると発表した。市場環境の激化により事業継続は困難であると判断した。 - シェア1位追求と顧客ニーズ追従の2面作戦を徹底、パナソニックの産業用部品事業
パナソニックは2019年11月22日、各事業の状況を紹介する「Panasonic IR Day 2019」を開催。本稿ではその中から、パナソニック インダストリアルソリューションズ社(IS社)の社長である坂本真治氏の説明内容を紹介する。 - パナソニックの中期戦略目標は「低収益体質からの脱却」、聖域なく見直しを断行
パナソニック 社長の津賀一宏氏が、2019〜2021年度の中期戦略の考え方と、この半年間での取り組みの進捗について説明。津賀氏は「今中期戦略は低収益体質からの脱却が目標。これを実現した上で、より長期の目標として、2030年に向けて『くらし』で役に立つ、くらしアップデートの会社を目指す」と強調した。 - 半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」では、日本における電子半導体産業の未来を考えるシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」を開催。半導体露光機業界で日系企業がオランダのASMLに敗れた背景や理由について解説した。 - アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か?
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回は苦境が続く日系エレクトロニクス産業について解説する。 - ついに決まった事業撤退。そのとき、製造業エンジニアの身の振り方は?
大手メーカーの事業撤退を報じるニュースが珍しくなくなってきた昨今。起こってほしくない事業撤退ですが、逆境をポジティブにとらえることでチャンスに変えた製造業エンジニアもいるのです。