レクサス販売店で不正車検565台、人員不足などで慢性的な高負荷が背景に:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車は2021年7月20日、販売会社トヨタモビリティ東京が運営する店舗「レクサス高輪」において不正な車検(指定整備)が行われていたと発表した。対象のユーザーには直接連絡を取り、再車検を実施する。
トヨタ自動車は2021年7月20日、販売会社トヨタモビリティ東京が運営する店舗「レクサス高輪」において不正な車検(指定整備)が行われていたと発表した。対象のユーザーには直接連絡を取り、再車検を実施する。
訂正:初出時にタイトルの数値に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2021年7月21日14時)
不正車検の要因の1つは、メカニックなどの人員や設備の増強が追い付いておらず、慢性的に業務負荷が高い状況が続いていたことだという。使われ方や車両の状態の違いに合わせた作業ではなく、決められた時間内に車検を終わらせることを最優先する傾向もあったとしている。今後は、人員の増強や設備の更新を最優先で進める他、メカニックの労働環境改善を推進する。
検査未実施、数値の書き換え
不正な車検が行われていたのは、ヘッドライトの明るさ、フロントタイヤの角度、パーキングブレーキの利き、排ガスの成分、スピードメーターの精度の5項目だ。このうち、ヘッドライトとフロントタイヤ、パーキングブレーキの検査に関しては基準を満たす値に書き換えていた。排ガスとスピードメーターについては検査を実施していなかった。再車検が必要となる台数は565台に上る。
再発防止策として、点検整備や車検に要する時間を一律に設定せず、車両の状況に応じて決めることとした。営業スタッフによる聞き取りやメカニックとの打ち合わせによって、作業に必要な時間を正しく伝えるとともに、ユーザーを待たせないよう改善するとしている。
検査の信頼回復については、設備に表示される計測値を画像に保存する。また、車検の作業手順が適正であるか現場の環境に合わせて検証する。車検を行う検査員を対象に職務を再確認する勉強会を実施した他、営業スタッフなどに対して検査員の職務や業務内容を周知した。
検査員の悩みや疑問を受け付ける相談窓口を本社に設置するとともに、役員や幹部が現場に足を運び、課題を認識していくという。
不正車検は他の販売店でも
トヨタ系の販売店では、この他にも不正車検が発覚したケースがある。ネッツトヨタ愛知が運営する店舗「プラザ豊橋」において、2018年12月〜2021年1月までの間、保安基準適合証や標章の交付、指定整備記録簿の記載が不適切に行われていた。対象台数は5158台に上る。この件に関して、指定整備業務の取り消しと検査員の解任という行政処分を受けている。
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