1700社以上に検査不正製品を納品した日立金属の調査結果、1980年代から常態化:品質不正問題(1/2 ページ)
日立金属は2021年1月28日、同社および子会社で発生した一部製品における検査結果の改ざんや不適切な数値記載などを受け、調査結果と再発防止策を発表した。調査報告書では1980年代から検査結果の改ざんが定例化してきた点や、複数工場にわたる不正が常態化していた点など数多くの問題点が指摘されている。
日立金属は2021年1月28日、同社および子会社で発生した一部製品における検査結果の改ざんや不適切な数値記載などを受け、調査結果と再発防止策を発表した。調査報告書では1980年代から検査結果の改ざんが定例化してきた点や、複数工場にわたる不正が常態化していた点など数多くの問題点が指摘されている。
複数の組織で検査不正が常態化
日立金属では2020年4月27日に、特殊鋼製品と磁性材料製品(フェライト磁石および希土類磁石)の一部について、検査成績書に不適切な数値の記載を行う検査不正が確認されたことを発表している(プレスリリース)。特殊鋼は、クロムやニッケルなどを特殊配合した鋼であり、加工治具や自動車部材の材料に用いられている。また、フェライト磁石は、酸化鉄を主原料とする磁石で、主として、自動車のワイパー、パワーウィンドウなどの電装用モーターやエアコンなどの家電用モーターに用いられている。これを受けて、外部の専門家による特別調査委員会を設置し調査を進めてきた。
調査の結果、磁石製品、特殊鋼製品、自動車鋳物製品などにおいて、古いものでは 1980年代以降継続的に不適切な検査が行われていた状況が確認できたという。不適切な行為として確認できたものは以下のような内容である。
- 顧客と取り決めた仕様で定められた特性について、その検査結果を書き換えた
- 顧客と取り決めた仕様と異なる方法や手順による検査を実施した
- 一部の検査を実施せず、他の特性から算出した換算値や過去の実績値を元にした数値を検査数値として記載した
- 製造条件(製造場所、製造設備、外注先、製造工程、材料など)や検査条件(検査設備、検査手順など)について、顧客に対し必要な事前申請をせず変更をした
不適切検査の対象製品の顧客数は、日立金属グループの顧客数の9.4%となる1747社となった。事業撤退などで連絡がつかない場合などを除いては、基本的には全ての顧客には連絡済みだとしている。
コンプライアンス意識の問題、受注や納期のプレッシャーが要因に
発生原因とされたのが以下の3つの点だ。1つ目が「工程能力などを十分に検証せずに受注していたこと」である。受注の獲得を優先し、十分なデザインレビューを経ないまま、自社の工程能力、生産能力に見合わない条件で受注し量産化を進めたことが、不適切行為の直接的な発生要因になったとしている。
2つ目が「顧客と取り決めた仕様の順守や品質保証に関するコンプライアンス意識が希薄化していたこと」だ。技術力、製品に対する過信が、顧客と取り決めた仕様の軽視や品質コンプライアンス意識の希薄化につながったとする。また、正しい品質コンプライアンス知識を得る機会が不十分だったことも一因となった。特に多くの拠点では、顧客と取り決めた仕様が契約内容であり、それを満たさない製品の出荷が契約違反に該当するということへの理解が不十分だった。「品質保証」という概念が「製品性能を保つ」という趣旨で理解されており「個々の顧客と取り決めた仕様を順守する」という意識を十分に生まなかったという問題点を報告書では指摘している。
3つ目が「受注獲得や納期順守へのプレッシャー」である。受注獲得や納期順守へのプレッシャーが、受注にあたって十分に工程能力を検討すること、量産移行段階で顧客に仕様変更の提案を行うことの阻害要因となったとしている。
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