食品製造業のスマート工場化を支援、EdgecrossがWG活動を推進:スマートファクトリー(2/2 ページ)
Edgecrossコンソーシアムは、業界に特化した課題解決やソリューション構築を進めるためにワーキンググループ(WG)活動を強化。その1つが食品製造業に向けた「食品製造業向けソリューション構築WG」である。同WGリーダーを務める小玉昌央氏(サトー)に、食品製造業における課題とWGの取り組みについて話を聞いた。
2020年度は「設備トラブルの迅速改善」「省人化」「食の安全」に取り組む
2020年度(2021年3月期)は18社が参加し「食品製造業の動向と課題把握、ノウハウの取得」「連携による食品製造業向けソリューションの構築と強化」「構築したソリューションの導入と提案によるビジネスの拡大」を目的に活動を行ってきた。特に食品製造業特有の課題や特徴の把握に力を注いできた。
その結果、労働生産性(1人当たり付加価値額)が食品製造業では他業種に比べて低く、中小、零細企業が99%を占めるなど、規模の小さな企業が非常に多いという状況などが見えてきたという。さらに課題を掘り下げ、労働生産性については機械的要素と人的要素それぞれで課題を抱えていることなども分かってきた。
「例えば、食品製造機械はメーカーごとに独自開発されたものが多く連携などの汎用性に乏しかったり、属人的な機械調整が多かったり、検査も官能的な項目が多かったりする。一方で従業員定着率が低かったり、正社員率が低かったり、IoTなど先進技術への苦手意識が高かったりする人的部分の課題も多い」と小玉氏は語っている。また、生産についても工程が複雑で季節変動が大きいことに加えて、食品ロスへの対応も必要になるなど、食品製造業ならではの特徴がある。「企業規模に合わせた価格帯も含め、これらの独自の状況に合わせた解決策を用意することが必要になる」(小玉氏)。
同WGでは、これらの課題を明確化したことで、Edgecrossにより解決できるポイントとして「設備トラブルの迅速改善」「省人化、人の配置平準化」「食の安全」「生産管理」「SDGs」の5つに絞り込み、これらに対する具体的なソリューション構築に取り組む方向性を決めた。この中で2020年度は「設備トラブルの迅速改善」「省人化、人の配置平準化」「食の安全」の3つに取り組んだ。具体的にはWG参加企業がそれぞれの関連製品やソリューションを持ち寄り、これらの解決ポイントに役立つ形でどのようなソリューションが構築できるかという検討を進めた。
例えば「食の安全」については、不良品判定をカメラと画像AIシステムを使って行う仕組みや、クラウドでの外観検査や異常検知を行う仕組み、データ改ざんを防止する仕組み、日々の作業監視をペーパーレスで実現する仕組み、食品衛生環境で使用可能なパネルコンピュータなどを紹介し、これらの組み合わせなどの検討を進めたという。
2021年度は「SDGs」や「生産管理」に取り組む
2021年度については、WGへの参加企業が、25社に増加。さらに試験的に参加する企業9社を加え、大きく参加企業を増やした形で取り組みを進める。5つのポイントの内、2020年度に取り組めなかった「SDGs」「生産管理」の2つのポイントについて新たに取り組んでいく計画である。
「SDGs」については、食品製造業における「働き方改革」「エネルギー効率最適化」「食品ロス削減」などのテーマとする。それぞれで働き方の見える化サービスや、エネルギーマネジメントシステム、需要予測や需給最適化についてのソリューションなどが、食品製造業にどのように最適化できるかについて検討を進めていく方針だ。「生産管理」については、食品ロス低減にも関係するが、「在庫圧縮」や「リードタイム短縮」「原価管理」などをテーマに取り組みを進める。
現状では「コロナ禍による制限などで活動が限定されている面もあるが、展示会やセミナーなどで紹介をしてきた。声をかけられる機会も増えてきている。今後はさらに、食品製造業のユーザー企業と一緒に実証などを進め、より実践的な形のソリューションとして価値を生み出していけるようにしたい」と小玉氏は今後の抱負について述べている。
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