スマート工場のノウハウをサブスクで、富士通がCOLMINAサブスクサービスを開始:製造業IoT(2/2 ページ)
富士通は2021年6月から、新たに製造業向けのDXソリューション基盤として展開する「COLMINA(コルミナ)」のサブスクリプションサービスを開始した。2017年から「モノづくりデジタルプレース」として展開してきた「COLMINA」だが、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの裾野が広がるフェーズに入る中、新たな提供体制を用意することで中堅以下の製造業などへの提供を狙う。
富士通のモノづくりノウハウを生かしたテンプレート
現在サブスクリプション型で提供を開始しているのが「工場最適化ダッシュボード」と「生産品質分析テンプレート」「設備点検」である。ポイントは「製造業としての富士通」のノウハウを詰め込んだ、テンプレートを豊富に用意していることだ。既に富士通の工場内で実績がある、現実的で使いやすい仕組みをそのまま提供することで、短い期間ですぐに製造現場で運用でき、成果を迅速に生み出せるようにする。
平谷氏は「富士通の小山工場でのさまざまなスマートファクトリー化への取り組みなどを見て『その仕組みをそのまま使いたい』といわれることも多い。こうした意見を踏まえ、他の工場でも共通で使えそうなテンプレートを数多く用意した。製造現場はそれぞれで環境が大きく異なるが、富士通の工場内でも実績があるものを使うことで、現実的なサービスが提供できる」と述べる。
100画面以上のテンプレートを用意した工場最適化ダッシュボード
例えば、工場内のさまざまな情報を組み合わせ直感的に見える化するBI機能である工場最適化ダッシュボードでは、100種類以上の画面のテンプレートを用意している。これにより、全体の売上高や利益、コストなどを把握したい経営者や、工場単位の生産性や品質、納期などを把握したい工場管理者、実際の現場での設備の稼働状況や品質などを確認したい現場技術者など、それぞれの立場に合わせた情報を出し分ける仕組みを簡単に構築することなども可能となる。
「すぐに使える100種類以上のテンプレートを用意したことで、目的に合わせて自由に組み合わせてデータを基に改善活動を進められる。改善ポイントを把握して改善が進めばまたすぐに組み替えてさらに改善活動を回していくことなどにも適している。データドリブンのモノづくりの基盤とすることができる」と平谷氏は利点について語る。
同様に生産品質分析テンプレートについても、品質改善のシナリオなどを用意し、とにかくトライ&エラーも含めて、より早く、簡単に成果につなげられることを考慮したという。今後はシーメンスとの協業による設計領域とのデータ連携などについてもサブスクリプションサービスとして提供予定だ。
現状では、用意されたテンプレートなどは富士通のノウハウなどから組み立て型製造業に向けたものが多いとしているが「サブスクリプションサービスとして提供することで、ニーズや使用状況などを確認しながら、さらなるテンプレートなどの拡充を進めていく」と平谷氏は語っている。
当面のターゲットとしては、DUCNETなどとの協力で、工作機械業界への提案を強化するという。グローバル展開についても2021年度下期には欧州と米国で開始する計画だとしている。
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