冷凍機器の「iPhone化」を目指すフクシマガリレイ、リテールAIに挑む理由:スマートリテール(3/3 ページ)
業務用冷凍機器などを開発するフクシマガリレイが、現在リテールAI分野の事業展開に挑戦している。ハードウェアメーカーの同社がリテールAI分野に進出する意図とは何か。本社に設置したオープンイノベーション拠点「MILAB」と併せて話を聞いた。
協創を通じて“食”の市場活性化に貢献
入居のメリットは大きく分けて2つある。1つはフクシマガリレイが全国に持つ営業拠点などを活用して、入居企業の認知度向上に貢献する施策が展開できる点だ。併せて、同社が蓄積してきた製品生産のノウハウを生かしたサポートなども提供できる。
もう1つのメリットが、自社製品やサービスに関連した調理工程を、フクシマガリレイの開発した機器製品が導入された厨房でテストできる点だ。本社1階には「MILABキッチン」「MILAB食品工場研究室」などのブースがあり、MILABキッチンでは加熱機器や冷温機器を用いた厨房内オペレーションのテストが、MILAB食品工場研究室では「テストキッチン」での加熱調理機器による食品加工試験などが実施できる。
五十嵐氏は「例えば冷凍庫の冷却の程度を確認することは既存の各工場でもできたが、顧客企業が製品の使い勝手を確認できる場所はこれまでなかった。こうしたニーズを埋めるのが“第3の工場”のMILABである。近年、モノづくりの発想はプロダクトアウトからマーケットインへと変わっている。MILABを通じて、当社が手掛けていない領域でもスタートラップの力を借りながら関与して、同時に、顧客やパートナー企業からの提案に基づいた協創活動を行い、“食”の市場活性化に貢献したい」と説明する。
一方で、オープンイノベーションを推進する上での課題もあるという。「当社にはまだ、オープンイノベーションのための人材、専業チームがない。MILABの担当スタッフは通常業務と並行して業務に取り組んでいる状況だ。こうした組織体制は今後改善したい」(五十嵐氏)。
なお、本社1階にはMILABキッチンやMILAB食品工場研究室の他に、AIカメラ搭載のショーケースやスマートショッピングカートなどを設置した模擬店舗「MILABストア」もある。これまで、リテールAIの購買体験や導入検証を行うには、実店舗を借りて設備を実装する必要があったが、来社した顧客企業やMILABの入居企業がリテールAIを気軽に体験できる環境を整えた。
麻生氏は「本社のビル内にあるので、営業担当者が顧客を連れて当社の最新の取り組みとして紹介することもある。オープンな場を作ると、来場者からさまざまなアイデアがもらえる。実際に、はかりを用いて商品数を計測する仕組みをある企業から提案されて、実現に向けて取り組んでいる最中だ」と語った。
また麻生氏はリテールAIの市場成長性にも触れて、「現時点でリテールAIは一部の小売店舗が導入している程度だが、より大きな市場に育つ可能性があると見込んでいる。当社としては顧客にとってはお得で便利な購買体験を提供し、導入店舗に対しては『ムリ・ムラ・ムダ』を解消するサービスを提供していきたい」と意気込みを見せた。
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