冷凍機器の「iPhone化」を目指すフクシマガリレイ、リテールAIに挑む理由:スマートリテール(2/3 ページ)
業務用冷凍機器などを開発するフクシマガリレイが、現在リテールAI分野の事業展開に挑戦している。ハードウェアメーカーの同社がリテールAI分野に進出する意図とは何か。本社に設置したオープンイノベーション拠点「MILAB」と併せて話を聞いた。
全国のサービス担当者が保守など対応
もう1つ提供しているものが、ショーケースや、トライアルグループのRetail SHIFTが開発、管理しているスマートショッピングカートの店舗納品後の導入、保守サービスだ。スマートショッピングカートの導入に当たって必要となるカートの搬入作業の他、充電ステーション、決済ゲート、ゲート通過後にレシートを印刷するプリンタなどの設置を行う。また、これらの機器を導入するための電気工事、導入後の機器や機器周辺の清掃や故障時の保守なども引き受ける。
保守作業は各都道府県にいるフクシマガリレイのサービス担当者が担当する。今後、スマートショッピングカートの製造をフクシマガリレイ側で引き受けて、全国展開を目指す計画もあるという。
これらの製品、サービスに対する市場からの反応について、麻生氏は「ショーケースについてはすでに引き合いが来ており、商談段階に入っている企業が何社かある。最近の肌感覚では、『リテールAI』というワードが受け入れられやすくなっているように思う。2019年度の展示会と2020年度に出展した展示会では、来場者の反応が違った。労働力不足や自動化などの悩みを抱えている小売業者が増えていることの現れではないか」と説明する。
“食”の課題解決に貢献したい
これまで業務用冷凍庫など、ハードウェア製品を中心に事業展開していたフクシマガリレイがリテールAI分野に進出した理由は何か。麻生氏は、直接のきっかけはトライアルからの提案だったとした上で、「当社の主要顧客であるスーパーマーケットの市場は、少子化による人口減や若手人材の不足などで厳しい環境にある。市況を鑑みれば当社も何らかのビジネス変革を行わなければならないことは明らかだった。また、“食”の業界の課題解決に貢献したいという思いもあり、リテールAIの取り組みに注目した」と語った。
取り組みを進めるに当たり、リテールAI分野での事業展開を専門とするチームを社内で立ち上げた。立ち上げ2年目に当たる現在、同チームはショーケース開発やカメラの搭載手法を検討する他、スマートカートの導入や運用を行うフロー設計を行っている。
今後の課題について麻生氏は「POS連携などハードウェア以外のシステム面については整備不十分な領域が想定よりも多く、今後対応していく必要がある。これ以外にも、データを顧客に提供する方法やデータ分析のマネタイズ方法など、未熟な部分は多い。改善を重ねて顧客業務に貢献できるシステム、サービスに作り上げていく」と説明する。
第3の工場「MILAB」
フクシマガリレイが新たに取り組んでいるのはリテールAI分野だけではない。“食”に関連したスタートアップなどとのオープンイノベーションも推進中だ。
その拠点となるのが、同社が滋賀県と岡山県の生産拠点に次ぐ“第3の工場”とも呼ぶ「MILAB(ミラボ)」である。同社は2019年の社名変更と同時期に本社ビルをリニューアルしたが、その際、1〜2Fと8Fの食堂部分を「フクシマガリレイグループの新たな価値を創造する施設」として改装した。これらの施設を総称してMILABと呼ぶ。
オープンイノベーション創出を目的とした施設として稼働しているのが、本社2階にある「MILABオフィス」である。食品や流通、畜産などの分野に携わるスタートアップなどが入居しており、入居者同士の交流や商談を通じてビジネスマッチングを促進するホールなどが設置されている。入居企業には、缶詰製品の商品企画や開発、食品工場の立ち上げを行うカンブライトや、精肉小売りサービスなどを手掛けるGoodGoodなどがある。
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