レッドハットが車載ソフトウェア、車載Linuxの機能安全対応や保守管理を支援:つながるクルマ キーマンインタビュー(2/2 ページ)
Red Hat(レッドハット)が車載ソフトウェアに参入する。車載情報機器で採用拡大が見込まれる車載Linux向けに、開発ツールやコンポーネントを展開する。車載情報機器向けのOSはGoogle(グーグル)の「Android」と車載Linuxの2つが主流となっており、グーグルへの依存を懸念する自動車メーカーやサプライヤーが車載Linuxに注目している状況だ。
MONOist 2021年4月に開催した年次イベント「Red Hat Summit」で、機能安全規格の認証やコンサルティングを行うexida(エクシーダ)との協業を発表しました。車載Linux参入との関係は。
Floyd氏 エクシーダとは、エンタープライズ向けやエッジ向けに展開してきたソフトウェアのプロセスや技術面をどのように変更すればISO 26262に対応できるか一緒に検討しています。これにより、われわれのソフトウェアコンポーネントと開発プロセスに対して、自動車向けの機能安全規格であるISO 26262の認証やサポートを継続的に受けられるようにしていきます。現在はエクシーダとハザード分析やリスク分析を行っており、ISO 26262の安全要求レベルASIL Bに対応したツールとコンポーネントから展開します。具体的な市場投入時期は回答できませんが、社内にタイムラインはあります。
自動車メーカーやサプライヤーは、機能安全認証を受けたレッドハットのツールとコンポーネント、アプリケーションが機能安全を満たすAPIなどの要件を定めたセーフティマニュアルを使うことで、機能安全への対応が容易になります。通常であればリリースやアップデートのたびにソフトウェアだけでなく開発プロセスも含めて機能安全規格の認証を受ける必要がありますが、レッドハットは継続的に、常に機能安全の認証を受けられる体制を持ちます。セキュリティやセーフティでアップデートが頻繁になるからこそ、常に認証を受けられることが重要になると考えています。
MONOist 具体的にどのようなアプリケーションをターゲットにしていますか。
Floyd氏 インフォテインメントシステムやメータークラスタ、複数の車載カメラを使うADAS(先進運転支援システム)などを考えています。インフォテインメントシステムはスマートフォンのようにアップデートし、カスタマイズできることが求められていきます。従来の組み込みソフトウェアとは異なる開発が必要です。ADASに関して最も厳しい安全要求レベルASIL Dへの対応が求められる分野はリアルタイムOSの領域ですが、パスプランニングや画像認識などは、Linuxで対応できる範囲もあるとみています。
MONOist 車載Linuxに関してレッドハットはエコシステムを立ち上げようとしています。AGLの活動と重複するのではないでしょうか。
Floyd氏 レッドハットがエコシステムを所有してコントロールするのではなく、すでにあるエコシステムを強固にし、広げていく支援をしたいと考えています。エコシステムには標準に準拠したものが必要です。例えば、ハードウェアのエコシステムはボードレベルであり、カーネルまではサポートされていません。
「BSP」(Board Support Package)の膨大なソースコードのメンテナンスに加えて、パッチのレベルやセキュリティなどがどれだけ標準にのっとっているかは、ボードメーカーに任されています。新規の機能が加わったときの安全性の担保、長期のメンテナンスや保証も同様です。Linuxのカーネル準拠にすれば、ボード特有の追跡管理の負担が軽減でき、ボードメーカーに関係なく長期的に同一のレベルのサポートを得られることで、エコシステムが広がります。
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