「Androidに依存できない」、日系自動車メーカーが取り組む車載Linux活用:車載情報機器(1/2 ページ)
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)による開発者向けイベント「Automotive Linux Summit」(2019年7月17〜19日、虎ノ門ヒルズフォーラム)に合わせて、AGLメンバーの自動車メーカーらがAGLを使ったさまざまなデモンストレーションを実施した。
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)による開発者向けイベント「Automotive Linux Summit」(2019年7月17〜19日、虎ノ門ヒルズフォーラム)に合わせて、AGLメンバーの自動車メーカーらがAGLを使ったさまざまなデモンストレーションを実施した。
自動車メーカーがAGLの活用に取り組む背景には、インフォテインメントシステムの開発コスト増大がある。スマートフォンの進化が早いことで開発当初の企画が陳腐化しやすくなり、競争領域ではない機能の追加にも多大な開発費がかかっている。インフォテインメントシステムではAndroidの採用が活発化しているが、AGLメンバーとして活動を続ける技術者は「Googleに頼らず、自分たちでハンドリングするためにもAndroid以外の選択肢は持っておかなければならない」と口をそろえる。
トヨタ自動車は、オープンソースのドライビングシミュレーター「CARLA」と連携して、メーターやヘッドアップディスプレイ(HUD)、インフォテインメントシステムをAGLで開発できる環境を展示した。これまでは決まったルートの走行データしか使えなかったが、ドライビングシミュレーターでの自由な走行のCANデータやGPS情報を基に開発することができる。インストゥルメントパネルやメーターに表示するルート案内の精度のテストや、ナビゲーションシステムと連動したHUDの表示の開発をサポートする。
デモンストレーションでは、インフォテインメントシステム用、メーターとHUD用の2つのECUをイーサネットでつなぎ、AGLで動作させた。HUDはインフォテインメントシステムのルート案内情報と、メーターの車速の情報を基に描画するシンプルな表示とした。ドライビングシミュレーターはステアリングをつなげた状態での手動運転と、自動走行の両方で運転することができる。
スズキは2023年に量産モデルでAGL採用目指す
スズキは、ルネサス エレクトロニクスのミドルクラスのSoC(System on Chip)「R-Car E3」を使って動作するメーターと2DINサイズのインフォテインメントシステムを展示した。これまでAGLを使うにはE3より上級のR-Car M3、H3といったSoCが必要だったが、デモは安価なグレードのR-Carを使用しながら1つのSoCでメーターとインフォテインメントシステムを動作できる点が特徴だ。開発期間は約2年だったという。
デモでは、メーターの警告灯の表示が欠損したときに、異常があることをドライバー向けに表示する監視機構を設けるとともに、再起動して修正を試みることができることを実演した。スズキとしては、インフォテインメントシステムを搭載せずメータークラスタのみとするなどのロースペックなシステムで、さらにコストを下げることが開発のテーマになるという。乗用車だけでなく二輪車のメーターでのAGL採用も検討している。
量産モデルにAGLを採用するには起動時間の短縮や、自動車向け機能安全規格ISO 26262でのASIL Bの担保、遅延時間の低減が課題となっているが、AGLのコミュニティと協力しながら解決していく。スズキは2023〜2024年ごろに量産モデルでのAGL採用を目指す。
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