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車載Linuxはインフォテインメント以外にも拡大、自動運転と機能安全に焦点車載ソフトウェア

Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)は開発者向けイベント「Automotive Linux Summit」(2019年7月17〜19日、虎ノ門ヒルズフォーラム)を開催。基調講演では、Linux FoundationでAGL担当エグゼクティブ ディレクターを務めるDan Cauchy氏が、AGLの現状や、インフォテインメントシステム以外の取り組みなど今後の方針について説明した。

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Linux FoundationのDan Cauchy氏(クリックして拡大)

 Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)は開発者向けイベント「Automotive Linux Summit」(2019年7月17〜19日、虎ノ門ヒルズフォーラム)を開催。基調講演では、Linux FoundationでAGL担当エグゼクティブ ディレクターを務めるDan Cauchy氏が、AGLの現状や、インフォテインメントシステム以外の取り組みなど今後の方針について説明した。

 AGLの2019年の活動は消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2019」からスタート。過去最大のブースを構えた。トヨタ自動車はAGLベースのインフォテインメントシステムを採用した「RAV4」を持ち込み、AGLとAmazon(アマゾン)の音声アシスタント「Alexa」が連携する様子を実演した。2020年のCESではさらに広いブースを構える計画で、AGLブース内に出展する企業を募集している。

 2019年に入ってから、加盟する自動車メーカーも増えた。Hyundai Motor(現代自動車)の他、Volkswagen(VW)がグループの乗用車、商用車ブランドを連れて新たに加わった。現在加盟する自動車メーカーはトヨタ自動車、ホンダ、マツダ、SUBARU(スバル)、スズキ、三菱自動車、Mercedes-Benz(メルセデスベンツ)、VWグループ、現代自動車という顔ぶれ。Cauchy氏は「これらの自動車メーカーによるグローバルでの出荷台数は50%を占める。AGLが世界で販売される50%のクルマに入る時代が見えてきたという事で、プロジェクトにとっての勝利である」と語った。

CES 2019のブースで展示したトヨタ自動車の「RAV4」。AGLベースのインフォテインメントシステムを採用したモデルだ(左)。AGL参加企業は146社に(右)(クリックして拡大)

 他の業種も含めると、メンバー企業は146社に上る。Cauchy氏は、自動車メーカーやインフォテインメントシステムを手掛けるサプライヤー以外だけでなく、さまざまな企業がAGLのエコシステムの一員であることを強調した。

 その例として、Adobe(アドビ)やアマゾンを挙げた。「アドビが参加しているのは、クルマにPDFを乗せるためではない。データアナリティクスのためだ。クルマもIoT(モノのインターネット)のエンドポイントの1つであり、どこに行き何をしたかといったデータには価値があるため、アナリティクスの対象になっている。また、クラウドもコネクテッドカーの一部であり、アマゾンはアレクサをAGLにポートしている。AWSとAGLをつなげることに取り組んでいる」(Cauchy氏)。

UCBは機能追加から本番導入重視に

 AGLのプラットフォーム「UCB(Unified Code Base)」の直近のアップデートについても紹介した。2019年3月にはUCB7.0(Grumpy Guppy)をリリース、音声認識関連のAPIが加わった。「音声認識APIはさまざまなソリューションが市場に出ているが、それぞれに対応するためにアプリケーションを書き換えたくはないはずだ。APIを提供することで、クルマの中身を気にせずにアプリケーションを作れるようになるのが重要だ」(Cauchy氏)。

 2019年7月末にリリースする最新バージョン「Happy Halibut」ではYoctoのアップグレードや複数のユーザーによるセキュリティのサポートなどさまざまな細かな機能が追加されるが、2020年2月にリリース予定の「Itchy Icefish」では、機能の追加は一段落する予定だ。

 過去の8つのリリースではプラットフォームとして機能を追加することが重要だったが、最近は自動車メーカーやサプライヤーなどから「AGLを本番に導入しやすくすべきだ」という声が上がっているという。「今後はAPIを増やし、本番導入をサポートする。AGLと実際の車両への搭載の間にあるギャップも、分析して埋めていく」(Cauchy氏)。

 長期間のサポートも従来より重要度が増すとしている。「これまでにも議論はあったが、重要度は決して高くなかった。これからはカーネルのロングサポートのイニシアチブを、YoctoやAGLと一致させなければならない。また、幾つかのリリースについては、10年以上にわたってセキュリティやバグを修正し続けることを宣言しなければならない。今後、こうした取り組みについてアナウンスがあるだろう」(Cauchy氏)。

インフォテインメントシステム以外にも取り組みを拡大

 分科会であるエキスパートグループについても動きがあった。まず、新たにインストゥルメントクラスタに関するエキスパートグループを立ち上げ、スズキが主導していくことを発表した。低コストなメーターやダッシュボードの開発に取り組むことがテーマとなる。同グループからは2019年11月に最初のリリースがあり、2020年のCESで何らかのデモを予定している。

 また、インフォテインメントシステムだけでなく車内の全ての機能にAGLで対応するという方針の下、V2Xに関してもエキスパートグループを立ち上げる意向を示した。政府や自治体から、駐車場など施設のインフラとクルマが連携することへのニーズが高まっており、V2Iの機能もAGLの一部にしていく考えだ。Cauchy氏は「参加したい企業はぜひ名乗り出てほしい」と呼び掛けた。


自動運転向け研究開発プラットフォーム「UADP」の概要(クリックして拡大)

 先進運転支援システム(ADAS)や自動運転にもAGLの活動を広げる。Cauchy氏は「AGLにADASや自動運転向けの研究開発プラットフォームはないのかという問い合わせが多い。これを受けて、Unified Autonomous Driving Platform(UADP)を立ち上げる。リアルタイムLinuxを使い、カメラやミリ波レーダー、LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)によるセンシングや、ビジュアライゼーションにも対応する。AI(人工知能)のスタックなど自動運転に必要なものを取り入れる」という計画を発表した。Autoware Foundationとも協力する。

 また、UADPは機能安全を満たすことも重視する。そこで、Linux Foundationの取り組みの1つであるELISA(Enabling Linux in Safety Applications)プロジェクトにAGLも参加し、メンバーであるトヨタ自動車やBMW Car ITなどと連携する。ELISAプロジェクトでは、自動車や航空機、鉄道、原子力発電などセーフティークリティカルな分野でオープンソースソフトウェアの機能安全を推進する。「Linuxが機能安全を満たせば、研究開発から本番に橋渡しできる」(Cauchy氏)。

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