脱炭素対応急ぐ三菱重工、100%子会社の三菱パワーを2021年10月に統合へ:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱重工業は、2020年度(2021年3月期)連結決算と2021〜2023年度の中期経営計画「2021事業計画(21事計)」の進捗状況について説明。2020年度連結業績は、2020年11月に発表した通期見通しをおおむね達成した。21事計では、エナジー事業を脱炭素に対応させる「エナジートランジション」に向け、100%子会社の三菱パワーの統合を決めた。
「モビリティ等の新領域」で2026年度に売上高1500億円
事計21では、新事業として「モビリティ等の新領域」に向けた取り組みを進める方針を示している。泉澤氏は「これまでのコンポーネント提供から、自律化・知能化された複合機械システムを提供するソリューションビジネスに変えていく。そこで重要なのが、機械製品の特性を把握した上でのデジタルツインの実現だ」と説明する。
現在、物流分野でのソリューション提供に向け、飲料業界や冷凍倉庫業界とのPoC(概念実証)に取り組んでいるところだ。子会社の三菱ロジスネクストが開発した「ΣSynX(シグマシンクス)」などを活用し、顧客の課題を分析するデジタルツインを構築する。2026年度をめどに、物流自動化ソリューションで売上高500億円、コールドチェーンソリューションで売上高1000億円などを想定している。
物流自動化とコールドチェーンで積み上げたソリューションビジネスは、その後エナジーグリッドや地域モビリティなどに展開していく構想もある。
エナジートランジションやモビリティ等の新領域では、外部パートナーとの連携が不可欠だ。三菱重工は2020年10月、本牧工場(横浜市中区)の敷地約2万m2を用いて、モノづくりを起点とするベンチャー企業を支援しイノベーションにつなげる「Yokohama Hardtech Hub(YHH)」を開設した。YHHには現在7社が入居しており、今後もさらに募集していく方針。「そういった意欲ある人材との交流は、石橋をたたいても渡らないタイプの三菱重工の技術者にとって大きな刺激になっている」(泉澤氏)という。
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