ソニーは最終利益1兆円超えでも慎重に、2021年度は減益見通し:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーは2021年4月28日、2021年3月期(2020年度)の業績を発表。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を逆に追い風とし、売上高、営業利益、純利益などの主要指標で過去最高を達成する好業績となった。
マイナス影響を抑え込んだエレクトロニクス分野
テレビやデジタルカメラなどエレクトロニクス製品を扱う、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野(EP&S分野)については、COVID-19による需要面、供給面でのマイナス影響があったものの、テレビやデジタルカメラの製品ミックス改善、モバイル分野のオペレーション費用削減などが貢献。売上高は前年度比4%減の1兆9207億円と減収になったが、営業利益は519億円増の1392億円と増益となった。
十時氏は「2020年度は年間を通じて、断続的に部品サプライチェーンで供給面の制約が生まれ、大きな影響を受けたが、代替品手配なども含め変化に機敏に対応することで高い収益力を確保できた。2021年4月からEP&S分野は“新生ソニー”(従来の企業としてのソニーはソニーグループへ商号変更)として集結した。2021年度は新たな体制で変化に強い運営を進める」と述べている。
スマートフォン端末などのモバイル事業の改善について「主に3つの要因があると考えている。1つは、ビジネス地域を絞り込んだという点だ。大部分を日本に寄せた形とし、収益性を改善した。2つ目が高付加価値商品への特化だ。製品ミックスを高付加価値帯に寄せたことで収益力を高めた。3つ目がオペレーション費用の削減である。設計の効率化などに取り組み効率的な運営を行えるようにした」と十時氏は語っている。
CMOSイメージセンサーなどを扱うイメ―イング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)は、米中貿易摩擦などによる主力顧客の販売減の影響を受け、モバイル機器向けイメージセンサーの販売が減少し前年度比5%減の1兆125億円の売上高となった。また、営業利益も減収影響や研究開発費の増加により前年度比897億円減少の1459億円となつた。
モバイル機器向けイメージセンサー事業では、市場環境の変化により、2021年度に販売台数を2019年度並みに戻し、2022年度から収益面でも2019年度並みを戻すというロードマップを描き、対策に取り組んでいるところだが「順調に進んでいる」(十時氏)という。
半導体不足などの状況が不安視されているが「イメージセンサーに用いるロジック回路半導体については、生産計画をカバーするキャパシティー確保はめどが立っている」(十時氏)。2021年4月20日には、長崎工場で新棟Fab5の完成披露を行ったが「生産能力増強は計画通りに進めており、事業拡大ペースに応じて今後も増築や拡張、設備導入などを進めていく」(十時氏)としている。
2021年度目標は慎重な姿勢
2020年度はCOVID-19の“巣ごもり需要”における特需を受けた一方で、マイナス面での影響を抑え込んだことで過去最高の好業績となったが、ソニーグループとしての新たな節目となる2021年度の業績については慎重な姿勢を見せる。売上高については、前年度比8%増の9兆7000億円を見込むが、営業利益は同419億円減の9300億円、税引前利益は同2874億円減の9050億円、純利益は同5118億円減の6600億円を見込んでいる。なお、ソニーでは2020年度までは米国会計基準を採用していたが、2021年度からIFRS採用としている。
また、2021〜2023年度の経営指標として、調整後EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)の3年間累計額4兆3000億円を新たに掲げた。「従来経営指標としてきた営業キャッシュフローは、金融分野などでは適用しにくく、期ずれが起こりやすい。金融分野も一体化したことで、どういう事業体でも評価しやすい調整後EBITDAを採用した」と十時氏は狙いについて語っている。
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