カメラの焦点をAIが自動最適化、イスラエルベンチャーの画像処理検査装置:製造現場向けAI技術
リンクスは2021年3月16日、イスラエルのスタートアップINSPEKTOのAI画像処理検査装置「Inspekto S70」を同年4月1日から販売開始すると発表。検査対象物に合わせて、AIが焦点の絞り値など検査用カメラのパラメータを自動調整する他、検査範囲の自動設定なども行う。
技術商社のリンクスは2021年3月16日、イスラエルのスタートアップであるINSPEKTOのAI(人工知能)画像処理検査装置「Inspekto S70(以下、S70)」を同年4月1日から販売開始すると発表した。検査対象物に合わせて、AIが焦点の絞り値など検査用カメラのパラメータを自動調整するとともに、検査範囲となる関心領域も自動設定する。
INSPEKTOが狙う「自律型」マシンの市場
INSPEKTOはAI画像処理検査装置の開発、生産を行う2017年に創業したイスラエルのスタートアップだ。現時点では特に、工場設備管理者向けに「自律型マシンビジョン」の市場開拓を狙っている。
検査作業の自動化・効率化に向けてAI画像処理システムを導入する動きが各所で広まっている。ただ、工場施設には高度な画像処理技術を有するAIエンジニアが常駐しているケースは少なく、さらに現場の担当者にカメラやレンズに関する知識が豊富にあるわけでもない。こうしたユーザーに対して、AIによる自動化・効率化の手法を取り入れた使い勝手の良い画像処理検査装置を提供するのが「自律型マシンビジョン」の基本コンセプトである。運用時だけでなく導入時にもメリットがあり、自律型マシンは非自律型と比較してシステム構築時間を約10分の1に短縮できるという。
3つのプロセスをAIで自動化
S70のカメラ画素数は3.1MP(メガピクセル)で、対象物との距離は10〜100cmで自動調節する。最小検出サイズはカメラと対象物の距離が10cmの際に、0.3mm2となる。光学ズームは12倍で、検査サイクルタイムは0.8秒。これまでに、電気の配線経路検査や、車載用金属ピストンの塗装状態検査、医療用防塵マスクの欠陥検査などで海外での採用実績がある。
S70は、画像処理検査工程における「見る」「見つける」「検査する」という3フェーズそれぞれに対応したAIを搭載する。
「見る」では、AIがカメラやレンズなど撮像系ハードウェアのパラメータ最適化を行う。具体的には露光時間、焦点、照明を自動調節する。また、S70のハードウェアについてリンクス 代表取締役の村上慶氏は「INSPEKTOはあえてとても高性能なカメラ、レンズ、照明機器を独自開発して、S70に搭載している。これにAIの自動調整機能を組み合わせることで、幅広い検査シーンに対応可能となった」と説明する。
「見つける」では、AIが検査対象物を自動的に認識し、検査領域を絞り込む。画像処理システムでは検査対象物とその背景の領域を区別することで、検査精度を向上する作業が必要になる。S70ではこのプロセスを自動化して、さまざまな形状や表面素材を持つ対象物に対応できるようにしている。
「検査する」では実際にAIが対象物の欠陥部分を検出し、不良品判定を行う。AIにはINSPEKTOが独自開発したネットワークアーキテクチャを使用しており、また、20枚の良品画像だけで学習が完了するという特徴がある。追加学習が必要な場合も5分以内に終わるという。
村上氏は「INSPEKTOは各AIのソフトウェアアップデートを随時行い、課題解決力の向上に努める方針だ。また、検査の種類によってはS70のスタンダードな構成では対応できない場合もある。そのような場合に備えて、AIプラグインを後から組み込める仕組みも今後導入する予定である」と語った。
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