光沢のある製品も検査可能、教示ペンダントも不要なAI外観検査システム:FAニュース
住友重機械工業は表面上に光沢のある検査品でも欠陥検出が可能な、独自の画像処理AI(人工知能)アルゴリズムを組み込んだ3D外観検査システム「KITOV-ONE(キトフワン)」の取り扱いを開始した。検査品の撮影画像をアルゴリズムで処理することで、ハレーションが生じた画像からも傷やへこみなどの工夫などが盛り込まれている。
住友重機械工業は2020年7月22日、表面上に光沢のある検査品でも欠陥検出が可能な、独自の画像処理AI(人工知能)アルゴリズムを組み込んだ外観検査システム「KITOV-ONE(キトフワン)」に関するウェビナーを開催した。検査品の撮影画像をアルゴリズムで処理することで、ハレーションが生じた画像からも傷やへこみの箇所を特定できるといった工夫などが盛り込まれている。
イスラエルのソフトウェアベンチャー企業が開発
KITOV-ONEは画像処理ソフトウェア開発に強みを持つイスラエルのベンチャー企業KITOVが展開する外観検査システムだ。KITOVには外観検査で実績を積んだ社員が在籍しており、こうした背景がKITOV-ONE開発につながったという。
光学ヘッドには500万画素の高解像度カメラと5つのLED照明を組み込んだ。検査品を乗せる回転テーブルには6軸のロボットアームが付属しており、撮影時に検査品を回転させる役割を担う。ロボットアームの動作設定、管理や撮影した画像の解析はKITOVソフトウェアで一括で行う。100ミクロンまでの傷やへこみの他、髪の毛の付着やねじ止めの浮き具合を検出できる。また、OCR機能も搭載しているため、ラベルのプリントミスなども判定する。検査結果はPDF形式のレポートとして表示される。撮影した画像は良品と不良品を問わずシステム内に蓄積されており、製品の品質改善の分析として使用することも可能だ。
ティーチングペンダント不要で導入もしやすい
最大の特徴は、アルミニウムなど光沢のある材質を使用した、または、鏡面加工を施した検査品の欠陥も検出できるという点だ。住友重機械工業 メカトロニクス事業部 営業部 新商品推進グループの式森洋介氏は「外観検査の撮影時にはフラッシュをたく。しかし、光沢のある検査品を撮影するとハレーションが発生してしまい、画像から傷やへこみ箇所が見つけづらくなるという問題があった。これが外観検査のネックとなっており、当社の顧客からの相談も多かった」と語る。
この問題に対してKITOV-ONEは独自のAIアルゴリズムで解決を図る。ハレーションが生じた箇所をAIアルゴリズムが自動的に画像処理することで、本来存在していた傷やへこみなどの位置を特定し、画像上で再現できる。またAIアルゴリズムとは別に「LED照明の配置を工夫するなどでハレーションの発生自体を抑える工夫も取り入れている」(式森氏)という。
またKITOV-ONEのもう1つの特徴として、検査品の種類ごとに自動スキャンして作成した3Dモデル上で検査箇所や項目を指定する方式を採用した点が挙げられる。ティーチングペンダントなどを使った教示は行わない。3Dモデル上で動作を指定する分、現実でロボットアームを動かして教示する場合に比べて、全体の作業が効率化する。このため、外観検査装置の扱いに慣れていない企業でも導入しやすいという利点がある。製品の寸法を入力しておけば検査品周辺にバーチャルシールドが設定されるため、KITOV-ONEと検査品の接触も防げる。
また式森氏は「教示が簡単なので、小ロット多品種の生産現場にも導入しやすいという利点がある。形状や材質がさまざまに異なる製品に合わせて、逐一ティーチングペンダントでロボットアームを教示するというのは大変な手間がかかる。KITOV-ONEではPC上で教示が行える分、スピード感をもって検査を進められる」と説明した。
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