新型コロナからの新車生産の回復に水を差す、半導体不足の影響:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
自動車生産に半導体の供給不足の影響が広まっている。日系乗用車メーカー8社が発表した2021年1月のグローバル生産実績は、トヨタ自動車、日産自動車を除く6社が前年実績を下回った。なかでもSUBARU(スバル)は半導体不足の影響が大きく、前年同月比で3割近い減産を余儀なくされた。
スズキ
スズキの1月のグローバル生産は、前年同月比11.2%減の26万5285台と6カ月ぶりに前年実績を下回った。グローバル生産の半数以上を占めるインドは、販売は1月の過去最高を更新するなど好調を維持しているものの、祭事期特需への対応として12月まで生産ペースを高めていたことへの反動もあり、生産自体は同10.1%減と6カ月ぶりのマイナスとなった。また、ハンガリーやインドネシア、パキスタンなども低迷し、その結果、海外生産は同14.7%減の18万7350台と5カ月ぶりに減少した。
国内生産は前年同月比1.5%減の7万7935台と2カ月ぶりに減少した。半導体不足の影響が一部出ている。ただ、「ハスラー」「ソリオ」の新型車効果の他、「スペーシア」「ワゴンR」「ジムニー」などの好調により国内販売は7カ月連続でプラスを維持。その結果、国内生産の減少幅は8社中最少にとどめた。
ダイハツ
ダイハツの1月のグローバル生産台数は、前年同月比7.9%減の12万7900台と2カ月ぶりに減少した。国内生産は同3.4%減の8万748台と2カ月ぶりの前年割れ。軽自動車は同8.1%増と2カ月連続でプラスを維持したが、「ロッキー」とトヨタ向けにOEM供給する「ライズ」の販売が減少していることから、登録車生産は同21.4%減と大きく減らした。
海外生産は前年同月比14.8%減の4万7152台と11カ月連続のマイナス。減少幅も12月より12.3ポイント悪化した。回復基調が続いていたマレーシアが減少に転じた他、インドネシアも同20.6%減と回復の道筋が見えない状況が続いている。
マツダ
マツダの1月のグローバル生産台数は、前年同月比11.8%減の11万1209台と3カ月連続で減少した。国内生産は同12.1%減の7万1980台で、2カ月ぶりのマイナス。国内販売はプラスとなったものの、ボリュームの大きい輸出が同5.0%減と減少した。生産車種の内訳では「マツダ3」「CX-5」「CX-30」など主力モデルが2桁パーセント減となった。輸出の地域別では、北米が大きく落ち込んだ。ただ、1月のグローバル販売を見ると、米国は堅調に推移しており、欧州は同31.5%減と低迷が目立つ。
海外生産は前年同月比11.2%減の3万9229台と3カ月連続の減少。中国は、春節による休業の時期ずれにより同26.2%増だった。一方、メキシコはマツダ3や「マツダ2」の減少により同32.5%減と低迷。タイはピックアップトラック「BT-50」の生産終了により同40.4%減と大幅に台数を減らした。
三菱自
三菱自の1月のグローバル生産は前年同月比15.8%減の9万745台と17カ月連続で減少した。ただ、減少幅は12月より10.7ポイント改善した。国内生産は同21.0%減の3万8463台で10カ月連続のマイナスだが、減少幅は12月から15.9ポイント改善。「eKスペース」の新型車効果に加えて、国内最量販となった「デリカD:5」の販売が同13.0%増と好調で、国内生産をけん引した。
海外生産は前年同月比11.5%減の5万2282台と16カ月連続のマイナス。依然として2桁減が続くが、減少幅は12月より6.0ポイント改善した。他社に比べて回復が遅れていた中国が同1.2%増とプラスへ転じた他、主力拠点のタイが同10.8%減と12月より4.7ポイント改善するなど、着々と回復が進んでいる。
スバル
8社の中でも半導体不足の影響を大きく受けているのがスバルだ。1月のグローバル生産台数は前年同月比29.2%減の6万3603台と2カ月ぶりの前年割れ。減少幅は8社中最大となった。国内外の工場で半導体の供給不足による生産調整を実施。その結果、国内生産は同25.4%減の3万8025台と2カ月ぶりに減少。海外生産はさらに落ち込み、同34.1%減の2万5578台と2カ月ぶりのマイナスとなった。
その一方で、スバル車に対する需要自体は底堅い。1月の実績を見ても、国内販売は「レヴォーグ」の新車効果で前年同月比8.6%増と4カ月連続のプラス。北米販売も「クロストレック」(日本名XV)の好調などにより1月として過去最高の販売台数を記録した。
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