利益面の改善進むが半導体で売上高に明暗、自動車メーカー各社の通期見通し:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車が2021年2月10日、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算を発表し、日系乗用車メーカー7社の業績が出そろった。2020年4〜12月期は全社とも減収だが前年同期と比べて15%減から42.8%減まで開きが大きい。営業損益は7社中3社が赤字となった。
トヨタ自動車が2021年2月10日、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算を発表し、日系乗用車メーカー7社の業績が出そろった。2020年4〜12月期は全社とも減収だが前年同期と比べて15%減から42.8%減まで開きが大きい。営業損益は7社中3社が赤字となった。
米国や中国などの新車市場の回復や、諸経費・販管費などの削減の取り組みを受けて2020年10〜12月期の3カ月間は利益面で改善が目立った。ただ、2020年4〜12月期の9カ月間の業績としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染対策の都市封鎖などで事業活動が制限された2020年4〜6月期のダメージが響いて各社とも減収減益となった。
2020年度通期の業績予想については、見通しを修正しなかったスズキを除いて6社中5社が営業利益と当期純利益の見通しを上方修正した。諸経費や販管費の削減、原価改善の進展を反映している。最終赤字を見込む日産自動車、三菱自動車、マツダの3社は赤字幅を前回の予想よりも縮小する。一方、スバルは売上構成差の悪化と為替レートの影響により営業利益を100億円下方修正した。
2020年度通期の売上高の見通しについては、トヨタとマツダが上方修正したが、4社が下方修正となった。下方修正の要因として各社が挙げたのは、車載半導体の供給不足の影響だ。通期の販売台数の計画は、前回の予想からホンダが四輪車で10万台減、日産が15万台減となる。また、スバルは車載半導体の影響で2021年1〜3月の生産台数が4万8000台のマイナス、マツダは2月に国内外で7000台の影響が出ることを想定して対応する。
売上高の通期見通しを上方修正したマツダは「車載半導体の供給不足を織り込んだ上での上方修正」(マツダ 社長の丸本明氏)としている。トヨタは「部品にもよるが1〜4カ月分の在庫を持っている。リスクはあるが、車載半導体の供給不足による減産はない」(トヨタ 執行役員の近健太氏)とコメントした。
2020年4〜12月期 | 通期見通し | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 営業利益 | 当期純利益 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 | |
トヨタ | 195,252 | 15,079 | 14,680 | 265,000 | 20,000 | 19,000 |
△15.0 | △26.1 | △14.1 | △11.3 | △16.6 | △6.7 | |
ホンダ | 95,467 | 4,470 | 4,441 | 129,500 | 5,200 | 4,650 |
△16.8 | △30.1 | △8.5 | △13.3 | △17.9 | 2.0 | |
日産 | 53,174 | -1,316 | -3,677 | 77,000 | -2,050 | -5,300 |
△29.2 | - | - | △22.1 | - | - | |
スズキ | 21,755 | 1,387 | 1,132 | 30,000 | 1,600 | 1,100 |
△17.2 | △18.6 | △2.8 | △14.0 | △25.6 | △18.0 | |
スバル | 20,748 | 982 | 742 | 28,500 | 1,000 | 750 |
△16.5 | △35.6 | △33.6 | △14.8 | △52.5 | △50.8 | |
マツダ | 19,594 | -319 | -782 | 29,000 | 0 | -500 |
△23.3 | - | - | △15.5 | - | - | |
三菱自 | 9,527 | -866 | -2,439 | 14,600 | -1,000 | -3,300 |
△42.8 | - | - | △35.7 | - | - | |
上段は金額で単位は億円。下段は前年同期比の増減で単位は% |
トヨタの4〜12月期決算は
トヨタ自動車が発表した2020年4〜12月期決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比15.0%減の19兆5252億円、営業利益が同26.1%減の1兆5079億円、当期利益が同14.1%減の1兆4680億円だった。
為替やスワップなどの影響を除いた営業利益は前年同期から4300億円減となったが、2020年10〜12月の3カ月間では3750億円増だった。プラス要因としては、台数構成の改善など営業面の努力で3550億円、原価改善で500億円が貢献した。所在地別の販売台数や営業利益を見ると、日米欧の販売台数が前年同期を上回っており、営業利益率も改善している。販売台数が前年同期に届かなかったアジアでも、営業利益は前年同期から707億円増えた。近氏は「増益分は東南アジアと中国で半分ずつ」とコメントした。
2020年4〜12月期の9カ月間での営業利益の増減要因を見ると、販売減少などの影響で6150億円のマイナス要因があったが、原価改善の努力で1000億円、諸経費の低減で850億円を確保した。諸経費のうち、研究開発費は400億円増加した。
通期の業績予想は上方修正し、営業収益が5000億円増の26兆5000億円、営業利益が7000億円増の2兆円、当期純利益が4800億円増の1兆9000億円を見込んでいる。連結販売台数は、前回予想から10万台増の760万台を計画する。北米で3万台減となるが、日本で6万台増、欧州で4万台増、アジアで5万台増に引き上げた。
営業利益を7000億円増に上方修正したのは、台数構成の改善など営業面の改善で5050億円、諸経費の低減で1400億円、原価改善で300億円など増加要因があるためだ。
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