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日系乗用車メーカーの2020年の生産実績、回復の力強さを示す自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)

日系乗用車メーカー8社の2020年(1〜12月)のグローバル生産は、全社が前年比2桁パーセント減となるなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を大きく受ける結果となった。7月以降の下期は各社の生産回復が本格化し、月別で過去最高を記録するメーカーもあったものの、年間トータルで見ると都市封鎖(ロックダウン)などによる春から夏にかけての世界的な急減をカバーするには至らなかった。

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 日系乗用車メーカー8社の2020年(1〜12月)のグローバル生産は、全社が前年比2桁パーセント減となるなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を大きく受ける結果となった。7月以降の下期は各社の生産回復が本格化し、月別で過去最高を記録するメーカーもあったものの、年間トータルで見ると都市封鎖(ロックダウン)などによる春から夏にかけての世界的な急減をカバーするには至らなかった。一方、足元の12月の実績では、2桁パーセント増の生産や過去最高の販売を記録するメーカーも多く、改めてコロナ禍における自動車産業の回復の力強さを裏付ける結果となった。

2020年は中国や北米が回復をけん引

 2020年の自動車生産は、国内の消費税増税による影響や、中国や東南アジアでの市場減退など、年初からマイナス傾向でスタートした。加えてCOVID-19感染拡大が追い打ちをかけ、3月の世界的な感染爆発により状況が一変。欧米をはじめ世界各地でのロックダウン実施を受けて、自動車も工場の稼働停止を余儀なくされた。その結果、暦年での生産台数は国内、海外ともに全社が前年割れとなった。

 地域別では、感染が最初に広がった中国はいち早く生産活動を再開。市場の回復と合わせて年間トータルの生産でもトヨタ自動車とホンダが前年実績を上回った。北米は6月から本格的に稼働再開し、7月には北米に生産拠点を構える5社全てが前年比プラスとなった。ただ、下期は回復基調ではあるが、月別では増減があり、年間トータルでは新型車の生産を開始したマツダを除いて5社中4社が2桁パーセント減にとどまった。

 日系メーカーのシェアが高い東南アジアは、中国や北米などに比べて市場回復が遅れている。東南アジアに強みを持つダイハツ工業や三菱自動車の年間トータルの海外生産を見ても3割超の落ち込みで厳しい状況となっている。

 国内生産は、緊急事態宣言が発令された4月から急激に台数を落とした。5月を底に、7月ごろから緩やかな回復傾向を示し、9月には5社がプラス転換するなど着実な回復を見せている。

2020年の生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 2,922,605 4,986,883 1,600,387 1,537,670 7,909,488
▲ 14.4 ▲ 11.5 ▲ 13.8 10 ▲ 12.6
ホンダ 729,500 3,669,083 1,450,518 1,644,891 4,398,583
▲ 13.5 ▲ 15.2 ▲ 20.2 5 ▲ 14.9
日産 509,224 3,120,448 952,628 1,441,572 3,629,672
▲ 37.0 ▲ 24.8 ▲ 33.6 ▲ 7.2 ▲ 26.8
スズキ 928,387 1,650,514 - - 2,578,901
▲ 1.9 ▲ 21.7 - - ▲ 15.5
ダイハツ 910,686 483,909 - - 1,394,595
▲ 4.5 ▲ 36.8 - - ▲ 18.9
マツダ 747,033 428,106 145,611 218,526 1,175,139
▲ 26.1 ▲ 10.4 25 ▲ 4.6 ▲ 21.0
スバル 570,416 314,458 314,458 - 884,874
▲ 7.8 ▲ 14.7 ▲ 14.7 - ▲ 10.4
三菱 396,996 457,095 - 76,096 854,091
▲ 35.9 ▲ 39.0 - ▲ 39.9 ▲ 37.6
合計 7,714,847 15,110,496 4,463,602 4,918,755 22,825,343
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、%

12月は8社中6社が前年同期からプラス

 コロナ禍により世界規模で大きなダメージを負った日系メーカーだが、足元では力強い回復を見せている。12月のグローバル生産は、マツダと三菱自を除く6社がプラスを確保した。国内生産は日産自動車、三菱自を除く6社が増加。海外生産はトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、SUBARU(スバル)の5社がプラスとなった。市場の大きな中国と北米が世界生産をけん引する格好で、長らく厳しい市場環境が続いていた東南アジアも回復傾向を示しており、タイなどプラス転換する国が増えている。

 とはいえ、依然として不透明な状況が続いているのも事実だ。COVID-19の第三波により欧州などでロックダウンが実施されているほか、コンテナ不足など各国の港湾での混乱によるサプライチェーンへの影響も注視する必要がある。さらに世界的な半導体不足による自動車生産への影響が本格化し始めている。日系メーカー各社は2021年1月から生産調整を実施しており、今後も半導体不足による影響はしばらく続くとの見方が強い。

2020年12月の生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 252,698 502,883 147,660 164,291 755,581
6.3 18.9 38.2 12.6 14.4
ホンダ 61,486 366,506 117,328 188,767 427,992
21.2 17.4 16.0 29.7 17.9
日産 57,468 339,970 89,060 168,056 397,438
▲ 6.1 13.1 20.2 11.2 9.9
スズキ 92,110 185,197 - - 277,307
14.6 22.7 - - 19.9
ダイハツ 84,110 50,354 - - 134,464
7.4 ▲ 2.5 - - 3.4
マツダ 78,490 32,667 10,829 16,269 111,157
8.8 ▲ 23.8 ▲ 9.6 ▲ 35.3 ▲ 3.4
スバル 58,964 27,725 27,725 - 86,689
2.1 8.2 8.2 - 4.0
三菱 32,847 48,972 - 10,038 81,819
▲ 36.9 ▲ 17.5 - ▲ 20.8 ▲ 26.5
合計 718,173 1,554,274 392,602 547,421 2,272,447
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、%


トヨタ

 メーカー別に見ると、トヨタの2020年のグローバル生産台数は前年比12.6%減の790万9488台と2年ぶりに前年実績を下回った。国内生産は同14.4%減の292万2605台と2年ぶりのマイナス。消費増税による落ち込みに加えて、COVID-19拡大による工場の一部稼働停止、国内および輸出需要の減退に伴う生産調整などが大きく響いた。ただ、9月に12カ月ぶりのプラスへ転じた以降は前年超えを維持しており、COVID-19の感染拡大が収束しない中でも自動車市場の回復が進んでいることが伺える。

 海外生産は前年比11.5%減の498万6883台と3年連続の減少となった。地域別では、主力の北米が同13.8%減の160万387台で4年連続の減少。4、5月と大幅に落ち込んだものの、7月以降は回復基調を維持している。国別では米国は同16.0%減、カナダは同8.7%減、メキシコは同12.3%減だった。アジアは同6.1%減の241万2595台で2年連続のマイナスだった。

 このうち、いち早く回復した中国では「レビン」「ワイルドランナー」などの好調もあり同9.5%増の153万7670台とプラスを確保した。一方、中国を除くアジアは、主要市場のタイやインドネシアの落ち込みが激しく、同25.0%減だった。欧州も同12.9%減の67万6872台と低迷。ハイブリッド車(HV)は好調だが、各国でのロックダウンが影響した。

 年間トータルでは厳しい結果となったトヨタだが、足元の回復は力強い。12月単月のグローバル生産は前年同月比14.4%増の75万5581台と、4カ月連続で前年を上回るとともに12月として過去最高を更新した。国内生産は同6.3%増の25万2698台と4カ月連続のプラス。世界各国での需要回復により輸出が伸びたほか、国内市場向けも「ハリアー」や「ヤリス」などの新型車が好調だった。海外生産は同18.9%増の50万2883台と4カ月連続の増加で、12月として過去最高を記録した。

 好調をけん引したのが主要市場の北米で、同38.2%増と大幅に増加し、2カ月ぶりのプラス。米国での「RAV4」「カムリ」などの販売が好調だった。中国もRAV4の販売好調で同12.6%増と9カ月連続のプラス。回復が遅れていたアジアは、タイやマレーシア、フィリピンなどがプラス基調となっているものの、インドネシアやインドは大幅減と明暗が分かれている。中国のけん引もあり、アジアトータルでは同11.6%増と4カ月連続で増加した。欧州もフランスでのHV販売の好調などを受けて、同22.2%増と5カ月連続で増加した。

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