日系乗用車メーカーの2020年の生産実績、回復の力強さを示す:自動車メーカー生産動向(2/3 ページ)
日系乗用車メーカー8社の2020年(1〜12月)のグローバル生産は、全社が前年比2桁パーセント減となるなど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を大きく受ける結果となった。7月以降の下期は各社の生産回復が本格化し、月別で過去最高を記録するメーカーもあったものの、年間トータルで見ると都市封鎖(ロックダウン)などによる春から夏にかけての世界的な急減をカバーするには至らなかった。
ホンダ
ホンダの2020年のグローバル生産は、前年比14.9%減の439万8583台と2年連続で前年割れとなった。国内生産は同13.5%減の72万9500台と2年連続のマイナス。国内市場向けは「フィット」や「N-WGN」の新型車効果があったが、COVID-19の感染拡大による市場低迷で主力の「N-BOX」や「フリード」「ステップワゴン」「ヴェゼル」などが2桁パーセント減と落ち込んだほか、北米向け輸出が8割減となった。
海外生産も同15.2%減の366万9083台と2年連続のマイナス。主力市場の北米がCOVID-19拡大による生産停止などを受けて同20.2%減と4年連続で減少した。一方、いち早く回復した中国は同5.0%増と暦年でもプラスを確保し、8年連続の前年超えを果たすなど好調を維持している。アジア全体では低迷し2年連続のマイナスとなったが、中国の好調に下支えされた結果、減少幅は同8.5%減にとどまった。
ホンダも足元の回復傾向が鮮明で、12月単月のグローバル生産台数は前年同月比17.9%増の42万7992台と4カ月連続で増加している。海外生産が同17.4%増の36万6506台と4カ月連続のプラスとなり、12月として過去最高を更新した。主力市場の中国と北米がけん引役で、中国は同29.7%増と7カ月連続で増加するとともに過去最高も更新。北米も同16.0%増と2カ月連続の増加で好調を維持している。これを受けてアジアトータルでも同20.2%増と6カ月連続で増加し、12月の過去最高を記録した。
国内生産は、2019年にフィットの発売延期やN-WGNの電動パーキングブレーキの不具合による生産停止などさまざまな減産要因が発生。その結果、2020年12月は同21.2%増の6万1486台と前年実績を大幅に上回り、4カ月連続で増加した。ただ、半導体不足の影響で2021年1月にフィットの生産調整を実施しており、今後も増加基調を維持できるかは不透明な状況だ。
スズキ
8社の中で最も回復が進んでいるのがスズキだ。12月の実績を見ると、グローバル生産台数は前年同月比19.9%増の27万7307台と5カ月連続で増加し、12月として過去最高を更新した。このうち同社生産の半数を占めるインドでは、9月以降に発生していた祭事期の特需などは一段落したものの、金利引き下げなどの需要喚起策が奏功して同33.7%増と大幅プラス。前年超えも5カ月連続と勢いを維持している。その結果、海外生産も同22.7%増の18万5197台と4カ月連続で増加した。
国内生産は同14.6%増の9万2110台で2カ月ぶりのプラス。国内向けでは最量販車種の「スペーシア」が落ち込んだが、「ハスラー」に加えて12月にフルモデルチェンジしたばかりの「ソリオ」の新型車効果が貢献。欧州向け輸出も同24.2%増と好調に推移した。
一方、2020年のグローバル生産台数は、前年比15.5%減の257万8901台と2年連続の前年割れとなった。国内は同1.9%減の92万8387台と2年連続のマイナス。2019年が完成検査問題で生産台数を減らしていたため8社の中では減少幅は最小となった。海外はインドのロックダウンをはじめ、インドネシアやパキスタンなどで台数を落とし、同21.7%減の165万514台と2年連続の減少となった。
スバル
スバルはコロナ禍の影響を考慮すると好調といえる。2020年のグローバル生産台数は、前年比10.4%減の88万4874台と3年連続で前年実績を下回ったものの、減少幅は8社の中で最小となった。国内生産は同7.8%減の57万416台で4年連続のマイナス。2019年1月の電動パワーステアリングの不具合による生産停止や、品質問題にめどをつけて2019年秋からラインスピードを高めるなどのプラス要因が重なり、年初は大幅増でスタートしたが4月以降の生産停止が響き、2020年トータルではマイナスとなった。
海外は同14.7%減の31万4458台と2年ぶりに減少した。海外唯一の自社生産拠点である米国工場は、インディアナ州の外出禁止令により3月下旬から生産を停止し、5月まで大幅減となった。さらに10月以降はコンテナ不足による港湾の混乱で部品供給が滞り、生産調整を実施した。米国の旺盛な需要に対して車両の供給が不足する事態が続いている。
もっとも、コンテナ不足による部品供給への影響は解消に向かっており、12月単月の海外生産は、新型「アウトバック」の増加などにより前年同月比8.2%増の2万7725台と3カ月ぶりにプラスへ転じるとともに、12月として過去最高を更新した。国内生産も新型「レヴォーグ」の好調により、同2.1%増の5万8964台と2カ月ぶりに前年実績を上回った。その結果、12月のグローバル生産は同4.0%増の8万6689台と2カ月ぶりにプラスとなった。
ただ、スバルも半導体不足による生産調整を余儀なくされており、2021年3月までに国内外合わせて4万8000台の減産を計画している。
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