いまさら聞けない「CBM」:5分で読める簡単解説(2/2 ページ)
IoTやAIの進展によって現在あらためて大きな注目を集めるようになった「CBM(状態基準保全)」。CBMが今なぜ注目を集めるのか、製造業にとってどういう効果をもたらすのかについて、5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。
なぜ「CBM」がこれほど注目を集めるのか
さて、こうした保全の環境の中、今あらためて「CBM」に大きな注目が集まっているのはどういう要因があるのでしょうか。
それは、IoTにより「状態を把握する」という作業を自動化でき圧倒的に負担を小さくできる状況が生まれているからです。対象機械の稼働情報や環境情報などを、センサーで取得し、そのデータをIoTを通じて、リアルタイムで収集することで、常時監視を行い、そのデータを基に保全活動を行えます。
従来は保全技術者がそれぞれの機械や設備、その部品などを毎回現場まで足を運んで確認していました。この方法では、点検量や項目なども制限を受けます。また先述した通り、技術者のスキルレベルによって見落としや見逃しなどが生まれる可能性がありました。
IoTを活用することでこうした作業の負荷を大きく下げることができます。そのため、点検項目数や点検頻度などを大きく増やせる可能性が生まれ、異常の兆候を見落とす可能性も低減できます。
また、TBMでは、短期的に想定以上に急激に機械や設備の使用が増えて負荷が増えたような場合では、メンテナンスのタイミングが合わずに故障につながるようなケースも生まれがちですが、こうした場合でも常時情報を取得できるため、適切なメンテナンスを行うことができます。
遠隔で常時監視も行えるために、保全技術者が現地までに足を運ぶ必要がありません。また、メンテナンスや部品交換も使用状況に合わせて頻度を下げることもできるので、保全活動の圧倒的な効率化を行える可能性も生まれます。
まとめますとIoTにより「状態把握」を「自動化」で圧倒的に負荷低減できるために「常時」「遠隔」での監視を行えるようになったという点が、CBMの新たな価値創出につながっているといえるでしょう。
期待が集まる「予知保全」
さて、この「CBM」を一歩進めた取り組みとして注目されているのが「予知(予兆)保全」です。予知保全とは、IoTにより機械や設備の情報を常時取得できるようになる中、これらのリアルタイムデータを集めて分析することで、「異常の予兆」をつかんで、異常が起こりそうな状況を予知し、それに合わせて保全活動を行うというものです。
この分析として注目されているのがAIの活用です。常時情報を取得できるということは、トレンドを捉えられるようになるということです。データの中から特徴点を抽出することで、異常と要因の相関関係を把握することができれば、データから異常箇所を導き出すこともできるようになります。これが実現できれば、故障時の要因の把握などの作業も圧倒的に容易になり、保全活動をさらに効率化できる可能性が生まれます。
ここまで見てきたように「CBM」は、IoTやAIの進展によって、新たな局面を迎えています。先進のデジタル技術を活用することで、保全活動の在り方そのものが大きく変わる可能性が生まれているといえるでしょう。
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