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カイゼンは罰ゲーム? IoTを活用した現場改善の進め方スマートファクトリー(1/2 ページ)

i Smart Technologiesは2020年6月10日、「『カイゼンが楽しく』〜罰ゲームではなくなったホントの話」をテーマにオンラインセミナーを開催。i Smart Technologies チーフコンサルタントの増田春輝氏が登壇し、IoT(モノのインターネット)を使った旭鉄工での現場改善の取り組みとそのポイントについて紹介した。

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 i Smart Technologiesは2020年6月10日、「『カイゼンが楽しく』〜罰ゲームではなくなったホントの話」をテーマにオンラインセミナーを開催。i Smart Technologies チーフコンサルタントの増田春輝氏が登壇し、IoT(モノのインターネット)を使った旭鉄工での現場改善の取り組みとそのポイントについて紹介した。

 i Smart Technologiesは、自動車部品メーカーである旭鉄工でIoTを使った改善活動の成果を外部に提供するために生まれた企業である。もともとは、旭鉄工の中で生産性改善を進める中で、IoT(モノのインターネット)を活用した安価でシンプルなシステムがないかと考え、最終的にコストパフォーマンスの点から自社開発をした。これが、大きな成果を得られたことから、i Smart Technologiesを設立しスマートファクトリーソリューションの展開を開始した。このスマートファクトリーソリューションは既に200社以上に外部販売しており、2019年9月にはブランドを「iXacs」としている(※)

(※)関連記事:製造業兼スマート工場ベンダーであるiSTC、200社への導入実績を生かし改善を加速

 今回のオンラインセミナーはこれらの前提となる「IoTを使った改善活動」に焦点を当てたものだ。2020年6月10日、18日の2回、同内容で開催しているが、実際に旭鉄工において改善活動を担ってきた増田氏が、従来の改善活動とIoTを活用した改善活動の違いを説明した。

罰ゲームのようだった改善活動

 製造現場にとって改善活動は当たり前のものとして定着している。旭鉄工でも年間6回ペースでの改善活動が定着していた。「私もそうだったが、現場のリーダーなど改善活動を進める立場からするとネガティブに捉えがちだった。『通常業務で忙しいタイミングなのに面倒』や『なぜ自分の部署がやらないといけないのか』『データ収集や分析を誰に担当させようか』など、煩わしさから不満が生まれ、一種の『罰ゲーム』のような捉え方をされていた」と増田氏は語る。

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i Smart Technologies チーフコンサルタントの増田春輝氏

 改善活動では、ターゲットとした改善ポイントに対し、データを収集して目標を計画。現状の把握を行い、改善内容を検討し実際に改善を実施するというサイクルを進める。これを目標達成まで繰り返すことになる。「1週間に1回の進捗報告会があり、こうした活動も負担となっていた」(増田氏)。

 旭鉄工では、改善活動の目的を「生産個数のアップ」と位置付けており、これに関連する生産活動の要素として、生産数、停止時間、サイクルタイムを位置付けている。全稼働時間から停止時間を引き、サイクルタイムで割った数字が生産数となるため、生産数を増やすには「停止時間を減らす」か「サイクルタイムを短くする」の2つの方法がある。これらの項目が記録できれば生産数向上の方法が見つけられる。

 ただ、従来はこれらの項目をまず記録して集めることが大変だった。「当時は生産管理板に生産個数や停止時間の測定結果などを手書きで記録していた。手書きでは作業者が複数台を担当している場合、時間ぴったりで記録するのは難しい。また、記入漏れが多く、記録の数値の信頼性が低いという問題があった」と増田氏は語る。また「とにかく対象機器にずっとはりついて時間を計測しなければならず、負担が大きかった。その割にデータの信頼性が低いために『測り方が悪い』というような話にもなり、労力の割に報われない印象だった。また、現状把握にとにかく時間がかかり、重要な改善活動の時間が作れない状況も生まれていた」(増田氏)。

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生産管理板に手書きで記録されたデータ。データを収集する難しさ、信頼性の難しさがあったという 出典:i Smart Technologies

 さらに作業者の視点で見ても、記録を取られる側が緊張でパフォーマンスに変化が出る場合も多く、日常的な作業の姿ではなく「瞬間的な記録を基準として改善を進めてよいのかという思いはあった」と増田氏は述べる。

 改善のサイクルを回すということを考える意味でも「本来は毎日ラインストップミーティングを行い、アクションを次々に起こしていく必要があるが、そのためには前日の作業内容を分析して提示する必要がある。しかし、手書きの記録を集めてデータを計算してグラフ化して出すような作業を毎日行うことは到底できなかった」(増田氏)。こうしたことが続き「改善活動がどんどん嫌になるような状況が生まれていた」と増田氏は当時を振り返る。

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