「EV化で工作機械需要が20%減る」は誤解、市況の緩やかな回復を見込むDMG森精機:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
DMG森精機は2021年2月12日、2020年度(2020年12月期)の業績を発表。市場環境は2020年4〜6月を底に回復しつつあるもののDMG森精機は2021年2月12日、2020年度(2020年12月期)の業績を発表。市場環境は2020年4〜6月を底に回復しつつあるものの通期では連結受注額が32%減となった他、受注残高も前年度末に比べて500億円減少するなど、厳しい状況を示した。
「EV化で工作機械が不要になる」は誤解――森氏による一問一答
ここからは、記者会見後の森氏による一問一答の中の主要なやりとりを紹介する。
―― 自動車業界における半導体不足の影響が指摘されているが、工作機械業界ではどうか。
森氏 工作機械における半導体としては、演算系とパワー系の両面で使っているが、直接仕入れているものについては約2年分くらいの在庫があり、現状では特に問題ない。CNCについても、ファナックやシーメンス、三菱電機、ハイデンハインから仕入れているが、それぞれ在庫を確保してもらっており、こちらも特に大きな問題はない。逆に半導体需要が旺盛であることから、関連会社であるサキコーポレーションの自動検査装置やマグネスケールの測定データ機器が絶好調だ。
―― 自動車業界のEV化の流れをどう見ているか。
森氏 「EV化によって工作機械業界の需要の20%がなくなる」と言われたりもするが全くの誤解である。EV化されると部品点数が減ることが論拠とされてきたが、それが誤解であることを証明するようなニュースが日本電産による三菱重工工作機械の買収だったと思っている。この買収の決め手の1つとして「EVのギア製造」が挙げられているからだ。駆動部がエンジンからモーターに変わったとしても、ギアやシャフト、ケースなどは必要になる。放熱性能が要求されるバッテリー周辺の機械など、金属加工が必要な領域は、違った形で広がる。そういう意味では全く心配はしていない。
―― 日本電産の三菱重工工作機械買収のように、ユーザー企業が工作機械メーカーを買収するような動きは今後広がると思うか。
森氏 もともと工作機械メーカーの多くはユーザー側が自社製品を作るために装置を作ったところから始まっているものが多い。これが、製品の複雑さが高まるとともに、専業企業側に移ってきた流れだ。今でも製造装置を内製化し「秘中の秘」としている企業も存在する。また、われわれの顧客でも、製品を購入いただいた後の据え付けや設定、カスタマイズにわれわれは関われず、全て顧客企業内で行うようなところもある。そういう意味では、こうした内製化の動きの一環としては語れるかもしれない。ただ、これは強い財務基盤があってこその動きで、同様の動きはそれほど広がらないのではないか。
デジタル技術の活用でリードタイム短縮へ
―― コロナ禍でリードタイムが伸びていると説明があったが、デジタル技術によりどのように短縮を進める考えか。
MONOist 工作機械の役割は天然資源が素材に変わったところから最終形状まで仕上げていくので、その意味で「リアル」は残る。ただ、その実作業以外の領域では、デジタル技術を活用して短縮できるところは進めていく。
例えば、約10年前から3次元設計を進めており、これを土台としたシミュレーションもさまざまな領域で使用している。これらを生かして、デジタルツインによるテスト加工をシミュレーションで行えるようになっている。リアルで試加工を行えば10日ほどかかるものが、シミュレーションであれば数時間で完了する。これを何度も繰り替えすことで、さまざまな試行錯誤が行える。既にデジタルシミュレーションの結果とリアルの試加工の結果は3%程度の誤差精度で行えるようになっており、リードタイムを大きく下げられる可能性が生まれてきた。
また、納品時の立会いもデジタルで行えるようにし、従来は多くの関係者が一度に集まる必要があったのが、デジタル上で柔軟に行えるようになり、省力化につなげることなども行っている。これらの土台は以前から用意していたが、コロナ禍で一気に進んだと考えている。
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