トヨタデンソーアイシンの車載ソフト会社が新体制に、目指すは「自動車のWindows」:車載ソフトウェア(2/2 ページ)
トヨタ自動車グループの自動運転開発体制で先行開発を担ってきたTRI-AD(Toyota Research Institute Advanced Development)は、2021年1月から新体制で動き出した。これまでは車載ソフトウェアの開発会社だったが、スマートシティのように自動車やモビリティを超えた取り組みに挑むため役割分担を明確にする。
同社 CTOの鯉渕健氏は「ウーブン・コアとウーブン・アルファでは、性格の異なる技術をそれぞれ最適な方法で開発していく。ウーブン・アルファで開発した技術をウーブン・コアがビジネスに落とし込んでいくなどのシナジーを創出したい。ウーブン・キャピタルがパートナーに投資することで事業化が加速する。分社化はするが、コンパクトな中で連携できることが強みになる」と述べた。
「ソフトウェアの方が優れているという意味ではない」
カフナー氏は、ソフトウェアファーストの考え方について「ファーストという言葉には、1位であるということと、先行するということの2つの意味がある。ソフトウェアファーストは、ソフトウェアがハードウェアよりも優れているという意味ではない。ハードウェアとソフトウェアの両方が優れていなければ、よりよい製品は生まれない。ソフトウェアでアーキテクチャを設計することで、モビリティはハードウェアとソフトウェアを同時並行で開発することができるようになる。これにより、開発期間を短縮しながら、ソフトウェアを効率的に使うことができる」と説明した。
ソフトウェア定義アーキテクチャの議論はウーブングループの中で始まっており、カフナー氏が目指す開発の在り方が実現されれば「モビリティは新たな価値を提供できるようになり、PCやスマートフォンのような効率的なエコシステムが生まれる」(カフナー氏)という。
車載ソフトウェアの開発プラットフォームAreneは、“効率的なエコシステム”において、MicrosoftのWindowsや、GoogleのAndroidのような存在となることを目指している。カフナー氏はその狙いを次のように語った。
「Areneはランタイム環境であり、OS(基本ソフト)であり、アプリケーション開発のツール群でもある。Windowsはソフトウェアの歴史の中で最も収益性の高いソフトウェアだ。ハードウェアと切り離してアップグレードしたり、動作したりすることが当たり前に行われている。Androidも多種多様なハードウェアで動作している。WindowsやAndroidは、開発環境やツール、テスト環境が開発者向けに提供されており、最高のソフトウェアエンジニアがそれに引きつけられている。自動運転システムのソフトウェアも同様で、車両に載せるのは必要なソフトウェアの10%でしかない。残りの90%は機械学習やデータ処理、コードレビュー、ソフトウェアアップデート、ログ解析、シミュレーションなどのさまざまなツールだ。われわれはそこに注力し、最新のAPIや先進のコンピューティング技術が、さまざまなハードウェアやパワートレイン、自家用車からサービスカーまで使える相互運用性を提供していきたい。実装したソフトウェアを試す場所としてウーブンシティも用意している」(カフナー氏)
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