宇宙空間未達や打ち上げ延期が続くMOMO、エンジンシステムを「根本的に」見直す計画:宇宙開発(2/2 ページ)
インターステラは2020年12月21日、同社が開発する低価格かつ量産可能な観測ロケット「MOMO」の改良開発計画について発表した。エンジンシステムに加えて、MOMOのコンポーネントを根本的に見直す方針だ。また、併せて新会社Our starsの設立も発表した。
新会社「Our stars」を設立
また、インターステラテクノロジズは同社の100%子会社として、人工衛星事業への参入を目的とするOur starsを設立することも発表した。Our starsの代表取締役社長には、インターステラテクノロジズのファウンダーである堀江貴文氏が就任し、稲川氏は役員を務める予定。
Our starsの設立によって、インターステラテクノロジズの技術などを活用しながら、ロケットと人工衛星を組み合わせた宇宙サービス事業を新たに推進する。現時点では「超超小型衛星フォーメーションフライトによる衛星通信サービス」「超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス」「宇宙実験用衛星・回収カプセル」の3事業を柱にして展開する計画だという。
コンセプトレベルで「世界初」の事業構想
超超小型衛星フォーメーションフライトによる衛星通信サービスは「コンセプトレベルで世界初で、実証実験もなされていない」(堀江氏)という新しい事業構想だ。数千個程度のピンポン玉サイズの小型衛星を宇宙空間で編隊飛行させて、大型衛星以上の通信性能を持つ巨大アンテナの再現を目指す。「電波が持つ波長の半分以下の距離間隔で小型衛星を配置すると、全体としては超巨大アンテナのような振る舞いが見られる。うまくいけば5Gクラスの通信スピードを実現することも可能だと考えて居る。また、通信の方向を宇宙空間に向ければ、巨大な電波望遠鏡としても運用できる」(堀江氏)。
小型衛星の内、いくつかが事故で損失しても残りの小型衛星で機能を補える。衛星が小型サイズのため、一度のロケット打ち上げで数千個程度を宇宙空間に運搬可能。最終的には数万個の衛星群を宇宙空間に配置する計画だ。
超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービスは、高度150〜200kmの超低高度を周回する小型衛星を用いることで、高分解能の写真を撮影できるというものだ。超低高度での撮影技術は、JAXAが超低高度衛星つばめ(SLATS)で研究開発したものを活用する。衛星の推進力にはイオンエンジンを採用予定。地上との距離が近い超低高度で撮影するため、従来より安価な撮影用レンズでも問題なく撮影できるという利点がある。
宇宙実験用衛星・回収カプセル事業では、2024年に運用終了予定のISS(国際宇宙ステーション)の日本実験棟「きぼう」で行っていたものと同類の無重力実験を、宇宙実験用衛星でも行えるようにするという事業案だ。微小重力環境化で、タンパク質合成や材料科学など広範囲にわたる実験に対応する予定。
堀江氏は、Our Starsの設立目的について「世の中に人工衛星を活用したサービスを提供する企業は多くあるが、ロケット会社と垂直統合したサービスはあまりない。ロケットに最適化した衛星をワンストップで作れれば、その分衛星の製造コストを抑えられる。衛星コンステレーションもより迅速に構築できる。さらに、大型ロケットでは運搬しにくい、超低高度など特殊な場所にも人工衛星を運べるようになるだろう」と説明した。
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