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宇宙空間未達や打ち上げ延期が続くMOMO、エンジンシステムを「根本的に」見直す計画宇宙開発(1/2 ページ)

インターステラは2020年12月21日、同社が開発する低価格かつ量産可能な観測ロケット「MOMO」の改良開発計画について発表した。エンジンシステムに加えて、MOMOのコンポーネントを根本的に見直す方針だ。また、併せて新会社Our starsの設立も発表した。

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 インターステラテクノロジズは2020年12月21日、同社が開発する低価格かつ量産可能な観測ロケット「MOMO」の改良開発計画を発表した。過去にトラブルが発生したエンジンを含めて、MOMOの各コンポーネントに根本的な改良を加える予定。また、併せて人工衛星事業への参入を目的とする新会社「Our stars株式会社」の設立も発表した。

宇宙空間未達、打ち上げ延期が続く「MOMO」

 インターステラテクノロジズは、これまでにMOMOシリーズを用いた打ち上げ実験を繰り返し行っており、MOMO3号機は国内の民間企業が開発したロケットとして初めて宇宙空間に到達した。しかし、後継の同4号機は雲を通過した際の静電気による機器トラブル、同5号機はエンジンノズルの破損が原因で宇宙空間に到達できなかった。同7号機は点火器の性能のばらつきなどが原因で当初予定日から打ち上げを延期している(7号機より先に受注した6号機は現時点での打ち上げを見送っており、製造を一時中断している)。

MOMO5号機は宇宙空間に到達できず、7号機は現在打ち上げを延期している*出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 これらのトラブルを振り返って、インターステラテクノロジズ 代表取締役社長の稲川貴大氏は「特に、エンジントラブルを防ぐことが今後のMOMOの性能向上において本質的な問題になる」と指摘する。

 しかし、エンジンの改良はMOMO全体のシステムに影響するため、コンポーネントレベルではなく、エンジン以外の部分にも及ぶ全体的な改良計画が求められていた。また、エンジン以外の面でも、部品製造や性能に質のバラつきがあり、当日の気象環境や温度で不具合が生じかねないこと、部品の組み付け時に一定のスキルが要求されるために保守性が悪いことなどが課題としてあった。

エンジンシステムは点火器、エンジンノズル、インジェクタを中心に見直し

 これらの問題点を改善すべく、インターステラテクノロジズは旧来のMOMOシリーズを「MOMO v0」と位置付けた上で、エンジンを含む各コンポーネントの全面的に改良して“メジャーアップデート”する「MOMO v1」の開発計画を進める。「MOMO v1では、MOMOシリーズだけでなく、当社が開発を目指す超小型打ち上げロケット『ZERO』の開発まで見据えて、各コンポーネントの実証実験を行う」(稲川氏)。


MOMO v0からMOMO v1へと「メジャーアップデート」を図る*出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 MOMO v1のエンジンシステムについては主に点火器、エンジンノズル、インジェクタの3点を、MOMO v0のものから改善する。点火器は噴出する火力を向上させるとともに、作動検知機能を強化する。また、エンジンノズルの材料についても、従来使用していたグラファイト(炭素材料)だけでなく、石英ガラスを線維化したシリカ繊維強化プラスチック(SFRP)の一部採用を検討している。インジェクターの圧力低減や軽量化も併せて進めている。


エンジンシステムを根本的に改良*出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]

 これらの改善候補となる箇所については、今後、垂直方向に噴射する縦吹きエンジン燃焼試験や実機型燃焼試験(CFT)、長時間の噴射に対する耐久試験の他、酸素と燃料の比率や燃焼室の圧力などを変動させた作動条件試験を実施して採用可否を検討する予定。また、現在打ち上げを延期している7号機については「MOMO v1で予定している改善点を、どこまで取り入れられるかを検討している最中だ」(稲川氏)という。

 エンジンノズル以外の具体的な改良ポイントとしては、現在5点が候補に挙がっている。

 1つ目は機体上部の長さで、MOMO v0から少し長くした上で標準ペイロードを搭載する。2つ目は艤装(ぎそう)配管の変更だ。運用時の取り外しが不要になるため、取り扱いが容易になる。3つ目は機体の姿勢安定を目指したジンバルシステムの改善。4つ目は電子機器(アビオニクス)の全体構成変更だ。ZEROに近い電子機器構成にするとともに、高信頼性コネクターを採用するなど工夫を加える。5つ目は人員の省力化を目的とした地上支援設備の刷新である。


エンジンシステム以外にも5点の改良を検討中*出典:インターステラテクノロジズ[クリックして拡大]
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