ロケットも衛星も「超小型」が熱い、激化する競争の行方はどうなる?:MONOist 2018年展望(1/5 ページ)
国内外の企業が「超小型」のロケットや衛星の開発を急ピッチで進めている。2018年の年明け早々からも、国内外でロケット打ち上げの実験や衛星の軌道投入が相次いでいるのだ。今、なぜ「超小型」が熱いのか。宇宙関連機器の開発に詳しい大塚実氏が解説する。
2018年は、超小型ロケットが熱い年になりそうだ。先陣を切ったのは、米国のベンチャー企業Rocket Lab(ロケット・ラボ)である。1月21日、独自開発した「Electron」ロケットが打ち上げに初めて成功。そして同年2月3日には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「SS-520」ロケット5号機を打ち上げ、超小型衛星の軌道投入に成功した。
その他今春には、実業家の堀江貴文氏が創業したインターステラテクノロジズ(IST)も、観測ロケット「MOMO」2号機の打ち上げを予定している。日本や世界で、今なぜ超小型のロケットや衛星が注目されているのか。本稿では、ゲームチェンジが起きつつある宇宙業界の現在についてまとめてみたい。
ニュージーランド発の漆黒ロケット
Electronは、全長17m、直径1.2m、重量13トンの2段式ロケットである。ケロシンと液体酸素を推進剤とする液体エンジン「Rutherford」を第1段に9基、第2段に1基搭載しており、150kgの衛星を高度500kmの太陽同期軌道に投入する能力を持つ。射点はニュージーランドに建設した。
冒頭で「超小型ロケット」と書いたが、小型や超小型に明確な定義はない。ただ、一般に小型ロケットといわれるイプシロンと比べても、ElectronやSS-520はかなり小さいため、本稿ではこれらを超小型と表現することにしたい。
イプシロン | Electron | SS-520-5 | MOMO | |
---|---|---|---|---|
用途 | 衛星用 | 観測用 | ||
全長 | 26.0m | 17m | 9.54m | 10m |
直径 | 2.6m | 1.2m | 0.52m | 0.5m |
重量 | 95.4トン | 13トン | 2.6トン | 1.15トン |
構成 | 固体3段 | 液体2段 | 固体3段 | 液体1段 |
打ち上げ能力 | SSOに590kg | SSOに150kg | LEOに4kg | 100kmに20kg |
表1 ロケットの比較 |
Electronの特徴は、最新の技術を積極的に取り入れていることである。特に注目は、電動ターボポンプを採用したRutherfordエンジン。ロケットのエンジンでは、燃焼室に推進剤を流し込むために、ターボポンプが使用される。通常、このポンプの駆動には、推進剤の一部を燃焼して発生させたガスを使うが、Rutherfordは電動になっているのだ。
電動になると、そのためのモーターやバッテリーを搭載する必要があり、重量は増えると考えられるが、駆動用ガスの配管などが無くなり、システムとしてはシンプルになる。モーターの方が制御もしやすい。大型ロケットでは重量的に不利だが、超小型ロケットではメリットの方が上回ると判断したのだろう。
Electronは、低価格/高頻度の打ち上げを目指しており、製造方法もユニーク。Rutherfordエンジンは、3Dプリンタで主要コンポーネントを製造していて、1基分を24時間でプリントできるという。ロケットの価格は、2016年の時点で490万米ドル(約5億2000万円)から。年間100回以上打ち上げることが目標だ。
試験1号機「It's a Test」の打ち上げは、2017年12月に実施。惜しくも失敗してしまったが、続く2号機「Still Testing」で、ついに成功。搭載した超小型衛星の軌道投入に成功した。これまでの宇宙開発の歴史を見ても、これだけ斬新なロケットがわずか1回の失敗だけで成功するとは、驚く他ない。
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