観測ロケット「MOMO」の打上成功から何が生まれるのか、次なる挑戦は「ZERO」:だからもうホリエモンロケットと呼ばないで(1/4 ページ)
2019年5月4日、インターステラテクノロジズ(IST)は観測ロケット「MOMO」3号機の打ち上げに成功した。これまで、創業者である堀江貴文氏の名前をとって“ホリエモンロケット”とも呼ばれてきたMOMOの打ち上げ成功は、今後どのようなことにつながっていくのだろうか。
インターステラテクノロジズ(IST)は2019年5月4日、北海道大樹町の射場にて観測ロケット「MOMO」3号機の打ち上げ実験を実施、初めて高度100kmを越え、宇宙空間へ到達することに成功した。宇宙への到達は、日本の民間開発のロケットではこれが初めて。過去2回はいずれも失敗しており、3度目の挑戦での快挙となった。
MOMOは、全長10m、直径50cmほどの超小型ロケット。エタノールを燃料、液体酸素を酸化剤とする液体ロケットで、20kgのペイロード(観測機器や実験機器などの荷物)を搭載する能力がある。2分間エンジンを燃焼させて機体を加速し、打ち上げの約4分後に最高高度に到達、その前後の約4分間は、微小重力実験に利用することも可能だ。
日本のロケットが初めて高度100kmを突破したのは、1960年のこと。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所のルーツとなる、東京大学生産技術研究所が開発したK-8ロケットだった。それからすでに半世紀以上。日本のロケットは大型化が進み、16.5トンもある補給船を国際宇宙ステーションに届けられるまでになった。
それなのに今、なぜこの小さなロケットが注目されているのか。今回の成功にはどんな意味があるのか。本稿ではそのあたりの背景について考えてみよう。
衝撃的だった2号機の打ち上げ失敗
まず、MOMO開発のこれまでの経緯について振り返っておこう。MOMOの狙いや位置付けについては、初号機の打ち上げ前に掲載した記事があるので、詳しくはそちらを参照してほしい※1)。
※1)関連記事:民間初の宇宙到達を目指すロケット「MOMO」、その挑戦の意義を探る
初号機は、2017年7月30日に打ち上げを実施。エンジンは正常に燃焼していたものの、打ち上げの66秒後に通信が途絶、目標を果たすことができなかった。異常発生時の高度は10km程度、速度は毎秒約400mと音速を超えたところ。事前のシミュレーションでは、このあたりが空力負荷の最も大きくなる「Max Q」(動圧最大点)になると考えられていた。
ロケットは打ち上げ後、加速していくと、空力負荷が大きくなっていく。しかし一方で高度が高くなると空気が薄くなるので、抵抗も弱くなる。この途中にあるピークが、宇宙への大きな“壁”となるMax Qだ。初号機は、この負荷に機体が耐えられず、空中で壊れたのではないかと推測されている。
それともう1つ、打ち上げで明らかになった問題は、機体のロール回転だ。同社のそれまでのロケットは、あえてロール回転させることで機体を安定にしていたが、今後の大型化を考えると、3軸姿勢制御の技術開発は必要。MOMOではガスジェットのロール制御機能を搭載したが、打ち上げではかなりの速度で回転してしまっていた。
ロール制御の能力を強化するために、姿勢制御スラスターの方式を変更。初号機は窒素ガスをそのまま噴射するコールドガスジェットだったが、2号機では推進剤の燃焼で発生させた高温ガスを噴射するホットガスジェットにしたことで、推力が大幅にアップした。また、タンク間部(燃料タンクと酸化剤タンクの間の構造)の強化なども行った。
Max Qの突破を狙った2号機の打ち上げは、2018年6月30日に実施。しかし、今度は打ち上げの約4秒後にエンジンが停止、機体は地面に落下し、炎上した。
この衝撃的な映像はネットで拡散され、世界的に大きな話題となった。しかし離昇直後の異常であったため、多くの映像が残っていたことは、原因究明にも役立った。また射場に落下したため、ロケットのほとんどの部品が回収できたことも大きかった。初号機のような高度になると、海上に落下するため回収は非常に難しい。
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