衛星軌道投入ロケット「ZERO」は“みんな”で開発、MOMO2号機の失敗が教訓に:宇宙開発(1/2 ページ)
ロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(IST)が、観測ロケット「MOMO」の開発状況を報告するとともに、衛星軌道投入ロケット「ZERO」の開発に向けた事業体制について発表した。
インターステラテクノロジズが打ち上げを予定している「ZERO」(左)と「MOMO3号機」(右)のミニチュア。1段式ロケットであるMOMOの全長10mに対して、1段式ロケットのZEROは全長22mになる(クリックで拡大)
ロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(以下、IST)は2019年3月19日、東京都内で会見を開き、観測ロケット「MOMO」の開発状況を報告するとともに、衛星軌道投入ロケット「ZERO」の開発に向けた事業体制について発表した。2018年6月に行ったMOMO2号機の打ち上げ実験失敗の原因分析と問題解決に向けた地上実験を終えたことから、MOMO3号機の打ち上げを「2018年内のできるだけ早い段階」(IST 代表取締役 CEOの稲川貴大氏)で行う。MOMOよりも開発難易度が高いZEROについては、IST単独で開発を行うのではなく、丸紅や宇宙航空研究開発機構(JAXA)など8つの企業や団体が参画するサポートチーム「みんなのロケットパートナーズ」とともに進め、2023年の打ち上げを目指す。
会見に登壇したIST ファウンダーの堀江貴文氏は「MOMO2号機で発生した問題の原因を究明し、リハーサルともいえる改善を図ったシステムでのテストも完了した。まだ正確な時期は決まっていないが、MOMO3号機の打ち上げに向けた準備は整っている」と語る。
MOMO2号機における打ち上げ実験失敗は、新規要素の姿勢制御用スラスター燃焼器が設定範囲外で動作したことが原因だった。これにより姿勢制御用ガス温度が設計値を上回り配管が溶融、漏れた高温ガスバルブ駆動系配管を焼損し、これを検知した安全システムが働いてエンジンが停止、墜落に至った。ISTは「この2号機の失敗を省みて、外部の有識者によるアドバイスも得ることにした」(井川氏)として、2018年10月には三菱重工業やJAXAなどでロケット開発に関わった技術者が参画する外部原因対策委員会を設立している。
その上で、ロケットを固定した状態で、準衛星軌道まで到達するのに必要な120秒間のエンジン燃焼を行う縦吹き燃焼実験(CFT)を実施し、実際の打ち上げでは用いないさまざまなセンサーからのデータを取得するなどして健全性を確認。これを受けて、MOMO3号機の打ち上げが決定した。
なおMOMO3号機は、実業家の丹下大氏、投資運用会社のレオス・キャピタルワークス、
日本創生投資がスポンサーになっている。IT企業であるSHIFTの社長だが、今回は個人としてスポンサーに名乗りを上げた丹下氏は命名権を取得。MOMO3号機の名称を「宇宙品質にシフト MOMO3号機」としている。
これまでと同様に北海道大樹町で行われるMOMO3号機の打ち上げ実験が成功すれば、ISTは観測ロケットの商用化を進めて行く考えだ。
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