製鉄工場における設備状態監視基盤の構築にAI分析ソフトを導入:製造IT導入事例
日本製鉄は、製鉄所での設備状態監視基盤を構築するため、NECのAI分析ソフトウェア「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析」を採用した。東日本製鉄所君津地区の熱延工場で、NECのAIを活用した長期間運用テストを開始する。
日本製鉄は2020年12月3日、製鉄所での設備状態監視基盤を構築するため、NECのAI(人工知能)分析ソフトウェア「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析」を採用したと発表した。
日本製鉄では、高度な画像解析や深層学習に対応する計算能力を備え、AIの開発やその適用が可能なプラットフォーム「NS-DIG」を整備している。同時に、AIおよびIoT(モノのインターネット)を含む高度なIT導入により、安全や操業の支援、安定生産、品質向上を推進している。
その一環として2021年1月に、東日本製鉄所君津地区の熱延工場で、設備状態のオンライン監視における長期間運用テストを開始する。NECのAIを活用し、製造設備の稼働や品質状況をリアルタイムでデータ収集し、異常の予兆検知を実施。同工場の各製造工程に設置した500点の物理センサーなど2000以上の計測項目データを基に、設備や装置の振る舞いをAIが学習する。これをモデル化することで、トラブルを未然に防止し、設備点検、稼働監視の効率化につなげる。
今回採用したNEC Advanced Analyticsは、NECのAI技術「インバリアント分析技術」を活用している。既に日本製鉄では、君津地区で原因究明に10日間かかったトラブルについて、NEC Advanced Analyticsを利用することで事前にトラブルの予兆検知が可能であることを実証している。
また、稼働中のデータを基にして通常とは違う状態を自動検知するため、トラブルによる稼働停止や設備不良による製品の品質劣化を防止する。鉄鋼製造プロセスに必要な異常判定時のレスポンスを有し、判定に使用するデータの前処理をユーザーがカスタマイズすることも可能だ。こうした汎用性、検知精度の高さなどを評価し、NEC Advanced Analyticsの採用を決定した。
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