AIによる在庫削減や検査効率化などを水平展開、NECがデジタル変革に本腰:製造業IoT(1/2 ページ)
NECは、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略について発表し、DXに対する取り組みを体系化した「NEC DXソリューション」を強化する方針を示した。
NECは2017年11月8日、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)戦略について発表。DXに対する取り組みを体系化した「NEC DXソリューション」において、新たに2つのソリューションと2つの基盤をリリースした。さらに、DXを支える専門部隊を2019年3月期(2018年度)中に1000人とするなど、強化を進める方針を示した。
DXとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など最先端のデジタル技術を活用することで業務プロセスなどの圧倒的効率化や新しいビジネスモデル構築などを実現する動きのことをいう。従来のエンタープライズIT技術が、企業の経営部門や管理部門などへの影響にとどまっていたのに対し、現場を含むビジネス全体の在り方を変えるものとして注目を集めている。
NECではさまざまなICT(情報通信技術)ソリューションを展開しており、これらのソリューションは全てある意味ではDX関連事業だといえる。NEC 執行役員兼CMO(チーフマーケティングオフィサー)の榎本亮氏は「あえて今回の発表はDXへの取り組み強化と置いたのは従来さまざまなDX関連事業を展開してきたからだ。ただこれまでは個々の取り組みだった。これらを体系化して展開する」と述べている。
NECのDXの展開としては「まず自社でNEC自らがデジタル変革を進め、そこで得られた経験やノウハウを体系化し、顧客企業の変革に活用する」(榎本氏)という流れで展開する。そのNECの自社内の変革の事例として榎本氏は、サプライチェーン変革、保守業務変革、営業・マーケティング変革、プログラム設計・開発変革の4つの事例を挙げた。
サプライチェーンの変革では、NECプラットフォームズ甲府事業所におけるサーバ工場での事例を紹介。サーバ製品はBTO(Build To Order)品であり、顧客の要望に応じてさまざまな部材を組み合わせて作る。そのため、一定量の部品在庫が必要となるが、欠品の防止を求めるがあまり、どうしても部材を多く持ちがちになっていた。この生産計画に、異種混合学習技術による需要予測AI(人工知能)を活用することで、BTO部品の在庫を金額ベースで45%削減することに成功したという。
榎本氏は「余剰在庫の削減だけでなく、欠品防止による生産の安定化やサプライヤーとの関係の改善などに効果が生まれた」と述べる。今回の結果は一定期間の実証の成果であるが、2017年11月からはNECプラットフォームズ甲府事業所で実運用を開始する。また、2017年度中には外部顧客に販売を行うとしている。
セブンイレブンの設備保全、住友電工のAI検査
これらの社内での取り組みをベースに既に多くの導入事例なども登場しつつある。その1つがセブンイレブン・ジャパンの設備保全である。NECとセブンイレブン・ジャパンは店舗オペレーションの改善でさまざまな取り組みを推進。従来は冷蔵庫などの店舗設備が故障した場合は店舗従業員によるコールセンターへの問い合わせで、保守作業員が出動する形となる。緊急出動の人海戦術となるため保守コストが負担となる他、店舗設備にダウンタイムが発生し、運営に支障をもたらすケースが発生する。
これらに対し、IoTなどを活用することで、センサーにより店舗状態をデータ化して遠隔監視し異常をすぐに通知できるようにした。保守作業員は店舗稼働情報をもとに計画化される。さらに取得した情報をAIなどで分析することで故障予測なども可能としたという。
また、住友電気工業では、製造現場の品質検査業務の支援にNECのAI技術を導入。品質検査は従来、ベテラン作業員が実施してきたが、人材不足や属人化による課題が生まれていた。これに対しAIで検査員の業務を支援することで、作業の軽減と安定した検査を継続。人的リソースのシフトを実現できたという。
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