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製造業がDXを進めるために必要な「視野360度戦略」製造業に必要なDX戦略とは(4)(2/2 ページ)

製造業でも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まる中、本連載では、このDXに製造業がどのように取り組めばよいか、その戦略について分かりやすく紹介してきた。最終回となる第4回は製造業がDXを進めるために必要な「視野360度戦略」について解説する。

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2.仕入れ先とのつながり

 大手製造業、特に完成品メーカーでは、購買パワーを背景に、取引先や外注先に対し自社EDI(Electronic Data Interchange)システムへの参加を求めています。費用負担や業務負担があったとしても、大手製造業と取引するメリットがあるため、多くの企業がこれらに対応するのが一般的となっています。しかし、中規模や小規模の製造業ではこうした仕入れ・調達体制は構築することができません。仕入れ先との調達の仕組みを効率化しようとしても、交渉はなかなかうまくいかない場合が多いといえます。

 そのため、ERPシステムを導入し発注情報や支給情報などがデジタル化されていても、PDFに変換しメール添付したり、紙に印刷してFAXしたり、もったいない業務プロセスを行うケースが数多く見られます。こうしたアナログ、かつ属人的な業務は、発注業務だけに限らず、その後の納期確認、発注変更、納期再確認まで延々と続くことになります。筆者も多くの製造業とお話しする機会がありますが、この領域の改善は、越えなければならないハードルの高さからか、解決を最初から諦めているケースや、低い優先順位とし、取り組みを後回しにするケースが多くあります。

 実は見逃されがちなこれらの領域も「製造業のDX」とされる領域の1つです。プラットファーマーのいくつかはSRM(Supplier Relationship Management)ツールを提供しています。例えば、Salesforce.comが提供する「Experience Cloud」では、発注元である製造業と外部の仕入れ先をつなぐコミュニティーを形成することができます。具体的には両者間で発注から納期回答、発注変更から新納期回答などのやりとりをコミュニティー上で行うことができます。従来のEDIと比較すると、非常に廉価かつ短時間での構築が可能で、従来はデジタル化できなかった企業でも活用できる可能性が生まれます。

 ちなみに、これらの領域は、投資対効果が出しやすい領域だといえます。現状では、多くの人的リソースを投入し、多くの時間を費やしつつも、付加価値を生み出しているとはいえない領域だからです。この領域のデジタルツールで自動化することで、圧倒的な業務プロセスの効率化が実現できます。

3.製品出荷後の顧客とのつながり

 顧客満足度を向上するには、製品を売るというだけでは不十分になってきています。そこで、出荷後も顧客とつながることが重要になってきているということは当然のことでしょう。また、製品によっては、納品後にさまざまなサービスを提供するフィールドサービスが企業にとって重要な収益モデルとなっているケースも多く見受けられます。例えば、工作機械、輸送機器、通信機器などです。フィールドサービスとして提供されるサービス内容も、年間保守契約、定期点検、修理作業、サービスパーツ提供などさまざまです。

 システム面で見た場合、フィールドサービス領域でも別系統のシステムが運用されているケースが一般的です。しかし、顧客情報の二重管理、複数サービス拠点ごとの個別在庫管理など、効率の悪い業務が発生する事態を招いています。そのため、ここの領域もDXにより抜本的な改善が見込める領域だといえます。

 フィールドサービス管理システムを他のシステムと同一プラットフォーム上に載せる選択をすれば、ERPの持つ品質管理情報やトレーサビリティー情報を共有できます。これにより、顧客満足に直結する付加価値の高いフィールドサービスを提供することが可能となります。

終わりに

 連載「製造業に必要なDX戦略とは」は今回が最終回となります。国内製造業のDXへの取り組みはまだ始まったばかりで、これからもまだまだ試行錯誤が続くと考えます。また、DXに関する技術はこれからも進化が続くでしょう。今回とは違った切り口からDX推進に関するヒントを、別の機会にお伝えできればと考えております。またお会いしましょう。

≫連載「製造業に必要なDX戦略とは」の目次

筆者紹介

栗田 巧(くりた たくみ)
Rootstock Japan株式会社代表取締役

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【経歴】
1995年 マレーシア・クアラルンプールにてDATA COLLECTION SYSTEMSグループ起業。その後、タイ・バンコク、日本・東京、中国・天津、上海に現地法人を設立。製造業向けERP「ProductionMaster」と、MES「InventoryMaster」の開発と販売を行う。

2011年 アスプローバとの合弁会社Asprova Asiaを設立。

2017年 DATA COLLECTION SYSTEMSグループをパナソニックグループに売却し、パナソニックFSインテグレーションシステムズの代表取締役に就任

2020年 クラウドERPのリーディングカンパニーRootstockの日本法人であるRootstock Japan株式会社の代表取締役就任。


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