製造業のDXでも必須となるプラットフォーム戦略、その利点とは?:製造業に必要なDX戦略とは(2)(1/2 ページ)
製造業でも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まる中、本連載では、このDXに製造業がどのように取り組めばよいか、その戦略について分かりやすく紹介している。第2回の今回は「プラットフォーム戦略」について紹介する。
製造業にとって「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が大きなトピックとなる中、本連載では製造業がどのように取り組むべきかという戦略について分かりやすく紹介しています。前回の「製造業がDXを進める前に考えるべき前提条件と3つの戦略」では、その全体像と前提条件について解説しました。その中でDX戦略として「プラットフォーム戦略」と「クラウドアプリケーション活用戦略」「視野360度戦略」の3つの戦略を考える必要があることを示しました。第2回となる今回はその中でも紹介した「プラットフォーム戦略」について考察していきます。
プラットフォームとは何か
本題に入る前に「プラットフォーム」とは何かについて少し整理しておきましょう。この連載におけるプラットフォームとは「ソフトウェアが稼働する環境」を意味します。このプラットフォームを提供する仕組みとして、今注目されているのが「PasS(Platform as a Service)」です。このPaaSをご説明するついでに、類似用語であるSaaS、IaaSもまとめて紹介したいと思います。
1.SaaS(Software as a Service)
ソフトウェアをサービスとして提供することです。ユーザー側は何も保有せずに、機能だけを活用し、対価を支払うというものになります。SaaSの具体例としては、Gmail、Yahooメールなどのフリーメール、顧客管理システム、会計システムなどの業務ソフトなどが挙げられます。最近では数多くのソフトウェアがサービスとして提供されるようになっています。SaaSについては次回の「Cloudアプリケーション活用戦略」で改めて詳しく取り上げます。
2.IaaS(Infrastructure as a Service)
ITシステムの稼働に必要な仮想サーバやセキュリティ機能などのインフラをサービスとして提供すること。IaaSの具体例としては、Google Compute Engine、Amazon Elastic Compute Cloud、Microsoft Azure IaaS、Oracle Cloud Infrastructureなどが挙げられます。従来はITインフラを構築するにもいちいちハードウェアの用意やセットアップなどを一から行わなければならなかったのが、インターネット経由のサービスとして活用できるために、必要に応じてサーバ構成を柔軟にスケールアップしたり、スケールダウンしたりすることができます。ただ、インフラのみを提供するわけですので、システムやサービスそのものの開発は利用者側が行います。
3.PaaS(Platform as a Service)
ソフトウェア稼働に必要なデータベースやプログラム実行環境などをサービスとして提供すること。PaaSの具体例としては、Google Apps Engine、Microsoft Azure、AWS、Oracle Cloud、Salesforce Platformなどが挙げられます。IaaSで提供されるものに加えて、アプリケーションの開発環境や実行環境などをサービスとして提供するというものになります。アプリケーション開発は利用者側が行いますが、その開発に必要なものが提供されます。
プラットフォームを取り巻く環境
B2Cの世界ではGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)に代表される米大手プラットフォーマーによる市場の寡占化が進んでいます。もともとはGoogleは検索エンジン、AppleはPCや音楽端末、FacebookはSNS、そしてAmazon.comはECサイト運営が本業でした。しかし、それぞれの市場での地位を活用してプラットフォーム環境を構築し、さまざまな製品サービスを提供しています。フリーメール、地図検索、音楽配信、映像配信、金融決済など、今ではGAFAが提供するサービスは多岐にわたり、人々の生活に欠かせないものになっているといえます。
同じことがB2Bの世界でも進行しています。その1つの例としてSalesforce.comがあります。営業支援システム(SFA)、顧客管理システム(CRM)を提供するSalesforce.comは「AppExchange」というマーケットプレース(アップルのApp Storeに近いコンセプトのもの)を運営しており、そこではさまざまな業務アプリケーションを提供しています。財務会計、人事管理、生産管理などの業務アプリケーションから、帳票作成、ファイル管理などさまざまなツールがそろっています。その他、Amazon.comのAWAなど、B2CプラットフォーマーのB2B向けサービス領域への進出も活発に進んでいます。
プラットフォーム戦略の観点から見ると、プラットフォーム提供者(プラットフォーマー)と被提供者(ユーザー)で大きく意味合いが異なります。プラットフォーマーの最大の目的は顧客の囲い込みだといえます。同一プラットフォーム上でさまざまな製品やサービスを提供することで、ワンストップで完結するモデルの提供を目指しています。では、ユーザー観点のメリットは何でしょうか。前置きが少し長くなってしまいましたが、ここからが今回お伝えしたい内容となります。
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