製造業DXに必要なクラウドアプリケーション活用の3つの条件:製造業に必要なDX戦略とは(3)(1/2 ページ)
製造業でも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まる中、本連載では、このDXに製造業がどのように取り組めばよいか、その戦略について分かりやすく紹介している。第3回は「クラウドアプリケーションの活用戦略」について解説する。
製造業にとって「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が大きなトピックとなる中、本連載では製造業がどのように取り組むべきかという戦略について分かりやすく紹介しています。前回の「製造業のDXでも必須となるプラットフォーム戦略、その利点とは?」では、DXで重要な位置付けを占めるプラットフォームと、それに伴う戦略について紹介しました。第3回となる今回は「クラウドアプリケーション活用戦略」を考察していきます。
普及が進むクラウドアプリケーション
B2Cアプリケーションの世界では「クラウドアプリケーション」が既に“標準”というくらい当たり前のものになっています。Yahoo!メール、Gmailといったメールサービス、InstagramやTikTokといった画像や映像の共有・配信サービス、ゲームなど、スマートフォン端末がここまで普及した中でそれをベースとしたクラウドアプリケーション以外を探す方が難しくなっているかもしれません。
では、B2Bアプリケーションではどうでしょう。会計ソフトや顧客管理ソフトなど、一部の領域ではクラウドアプリケーションが増えていますが、全体としてはまだ少数派だといえるでしょう。特に製造関連業務のアプリケーション領域では、圧倒的にオンプレミス製品が主流となっているのが現実です。
ちなみにオンプレミスとは保有する設備で運用するシステムのことです。企業で考えると自社内のサーバにパッケージアプリケーションをライセンス(ソフトウェア使用許諾)を購入してインストールしシステムを稼働させるようなシステムのことを指します。設備もアプリケーションも「買い切る」形の販売形式となるので、初期投資が大きくなるという特徴があります。
一方で、クラウドアプリケーションは、自社で保有する設備ではなくクラウド上の設備で駆動するアプリケーションを指します。クラウドプラットフォームについては、前回紹介しましたが、アプリケーション利用をサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)型モデルが構築できることが特徴です。サブスクリプションとも呼ばれる月額使用料を支払う販売形式を取れることが特徴です。
製造業DXに必要なクラウドアプリケーションの必須条件
クラウドアプリケーションといっても、市場にはさまざまな製品やサービスが存在します。ここでは製造業のデジタルトランスフォーメーション推進を前提にし、クラウドアプリケーションに求められる必須条件を説明していきます。
【条件1】サブスクリプション契約モデル
1つ目の条件は、当たり前のことですが、一定の契約期間を前提としたサブスクリプション契約モデルであることです。サブスクリプション契約モデルの最大の利点は「試しにやってみる」ということができることです。契約条件はクラウドアプリケーションやプラットフォーマーによって大きく異なるので、一概にはいえないところはありますが、仮に契約期間は1年間とすると、初年度の費用を支払うことで該当アプリケーションがすぐに利用できるようになります。
アプリケーションを活用するには、パッケージ選定に先立ち要件定義、Fit&Gap分析に時間や費用をかけることになりますが、それでも使ってみなければ分からないことがあり、導入決定後に「思ったものと違う」ということが生まれがちです。しかし、サブスクリプション契約モデルは、実際のアプリケーションをお試しで使用した後、本格運用可否判断ができるのは大きなメリットだと思います。自社業務に合わないパッケージ製品を我慢して使い続ける必要がなくなります。
おまけ情報
オンプレミス製品とクラウドアプリケーションでは、運用コストでも大きな違いがあります。オンプレミス製品の場合、ローカルサーバとネットワーク機器、データセンター運用、OSやデータベース、それぞれの保守契約、また運用のための人件費など発生します。システム運用規模にもよりますが、初期投資はもちろん、年間の運用コストはそれなりに大きな金額となります。
一方、クラウドアプリケーションは毎月の支払いは発生するもののサブスクリプション以外の大きな費用は発生せず運用の負荷を低減できる利点もあります。オンプレミスでも「ずっと更新をしない」という判断をする場合は、TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)的に利点を発揮できる場合もありますが、技術が日進月歩のIT領域においては、そういう状況は考えにくく、結果的にTCOの観点からもクラウドアプリケーションに利点がある場合がほとんどだといえるでしょう。
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