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広がる金属3Dプリンタと工作機械の融合、それぞれの技術方式の特徴JIMTOF2020(2/2 ページ)

2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして、東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻教授の笹原弘之氏が登壇。「金属材料のAdditive Manufacturingの基礎から見える未来予想」をテーマとし、金属AMの代表的ないくつかのプロセスの基本原理とメリットやデメリットについて述べるとともに、国内外の金属AMの最新動向について紹介した。

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金属3Dプリンタの方式による長所と短所

 現在の金属AMの方式には大きく分けると「粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)」「指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)」がある。どちらも高エネルギーを熱源としており、粉末床溶融結合はレーザーを用いるものが多いが、電子ビームを採用したものもあり、粉末材料を用いる。指向性エネルギー堆積方式は、熱源はレーザー、電子ビーム、さらにアーク放電を使用するケースもある。材料の形態は粉末に加えてワイヤを供給する場合がある。さらに、最近もう1つの方法として造形後に焼結するタイプが普及してきた。

 粉末床溶融結合方式は、薄く敷き詰めた粉末材料に、高エネルギービームを照射して溶融させ、それを固化させることで一層ずつ堆積し造形していく方式である。長所としては、比較的高精度で、複雑・精細な内部構造の造形が可能であることが挙げられる。また、ポーラス造形も可能となっている。一方で短所としては、高能率化が難しいことが挙げられる。粉体の管理や材料交換に手間がかかる他、後工程などでのサポート部分の除去が大きな負担になるという点がある。

 装置は各メーカーから発売されており、代表的なものとして、レーザーが1本のものに加えて、高能率化を図るためレーザーの数を増やしているタイプが直近では増えてきている。造形のサイズは250〜500mm程度で、造形精度は30μm程度であり、これ以上の精度を望むには、後工程として切削などを行う必要がある。

 指向性エネルギー堆積方式は、各種高エネルギービームなどを投入し、供給材料を選択的に溶融・結合させる方式である。材料は粉末・ワイヤで、熱源としてはレーザー、電子ビーム、アークなどがある。長所は大型化が比較的容易で、異種金属の造形が可能である点が挙げられる。また、複合加工化や既存部品への付加・肉盛・コーティングなどが容易に行える点も利点だ。ただ、短所としては微細形状造形が難しく、粉末の場合、材料の利用料が多くなるという点がある。

 この2つの方式に加えて、造形後に焼結を行う方法がある。この方式は、メタルインジェクション・モールディング(MIMの原理を応用)を活用したもので、バインダを含有した金属粉末を成形・焼結するという形で金属製品を作るものだ。この方式には「金属粉末とバインダをAM材料として積層造形する」「金属粉末をパウダーベッドに広げ液体結合剤を滴下し1層ずつ固着する」「金属ナノ粒子をジェッティングで積層する」という3つのタイプがある。いずれも形ができた後にバインダを飛ばし、焼結を行うというものであり、この時に体積の収縮がある。「この方式が、金属3Dプリンタの中では比較的低コストでできることで最近着目されている」(笹原氏)。

 また、笹原氏は、金属AMを取り巻く課題として「後工程の重要性(ロボットの活用なども含めて)」「AMならではでの構造」「新材料の開発」「信頼性・認証」「量産向けた取り組み強化」「機械系以外での適応」などを挙げ「これらを解決することで市場がさらに広がる可能性がある」と述べている。

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