広がる金属3Dプリンタと工作機械の融合、それぞれの技術方式の特徴:JIMTOF2020(1/2 ページ)
2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして、東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻教授の笹原弘之氏が登壇。「金属材料のAdditive Manufacturingの基礎から見える未来予想」をテーマとし、金属AMの代表的ないくつかのプロセスの基本原理とメリットやデメリットについて述べるとともに、国内外の金属AMの最新動向について紹介した。
2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして、東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻教授の笹原弘之氏が登壇。「金属材料のAdditive Manufacturingの基礎から見える未来予想」をテーマとし、金属AMの代表的ないくつかのプロセスの基本原理とメリットやデメリットについて述べるとともに、国内外の金属AMの最新動向について紹介した。
工作機械と金属積層造形を組み合わせる動きが加速
3DプリンタをはじめとするAdditive Manufacturing(以下、AM)技術は数年前までは試作品の製作で使われるケースがほとんどだったが、最近では最終製品の製造に使われるケースが増えつつあり、存在感が増している。国内では金型や医療部品を中心にAMにより複雑な形状の個別品を作る取り組みが進んでいる。一方海外では、航空宇宙産業を中心に軽量化を実現するプロセスとしてAMが大きく活用される段階にある。AM技術そのものが、金属製品の製造方法の革新につながる技術と評価されており「今後の工作機械業界の戦略を考える上でも重要な技術となってきた」と笹原氏は語る。
こうした流れを受けて、日本工作機械工業会は「Additive Manufacturing専門委員会」を設置し、活動を開始している。そこでは「AMで製作した加工品の品質と信頼性の向上」「AMによる難削材の加工」「AM積層造形装置の付加価値と費用対効果のバランス」などのテーマが取り上げられている。日本工作機械工業会では具体的に「AM製品の設計理論に関する調査・研究」「素形材(粉末)に関する調査・研究」「AMの普及・促進に関する啓蒙活動」「各国のAM技術動向の調査」に取り組む活動指針を示している。
AMに関して笹原氏は「最終製品への実際の活用が拡大しているきっかけとしてはGE Additiveの存在感が大きい」と指摘する。GE Additiveは、ARCAM AM(電子ビームによる粉末床溶接結合方式)、コンセプト・レーザーグループ(レーザーによる粉末床溶融結合方式)を傘下に収めてAMの活用を広げている。最もよく知られているのがジェットエンジンの燃料噴射ノズルである。従来は20のパーツを組み合わせて製造していたものを一体化しAMで製造することに成功した。これにより、30%の製造コスト低減、25%の重量削減、5倍の長寿命を実現するなど画期的な成果を得ている。生産能力も年間3万5000〜4万となっており、AMで指摘される生産性の問題をあるレベルで解決しているといえる。
一方、国内では4年前のJIMTOF2016から、複数の工作機械メーカーで金属AMと切削、研削、焼き入れなどの複合化した加工機が発表され始めた。デポジション方式では、DMG森精機、ヤマザキマザック、オークマ、三井精機工業、三菱重工工作機械、芝浦機械(TRAFAM)などが製品を紹介。また、日本独自の方法ともいえるパウダーベッド方式と切削を組み合わせたものを、松浦機械製作所とソディックが市場投入している。
DMG森精機は、ドイツのREALIZER(パウダーベット方式)に資本参加し、開発販売を行っている。2018年のJIMTOFでは、DMG森精機は工作機械フレームをトポロジー最適化により設計し、金属AMで製作した試作機を展示している。
また、三菱電機はAMの新しい形として、ワイヤとレーザー方式を組み合わせた開発機を発表した。その後も国内企業では新製品が相次いで登場している。三菱重工工作機械は2018年12月にデポジション方式の金属AM(LAMDA200)を発表した。同製品は複数材料の造形が可能(オプション)で、モニタリングフィードバック機能が特徴となっている。ニコンが2019年4月に発表した「Lasermeister 100A」は、手軽、コンパクト、安全、高品質を狙ったデポジション方式金属AMで、2020年5月には5軸タイプを追加した。3Dスキャナーを内蔵し、計測、アライメント機能により、既存部品への造形・補修が容易に行えるという独自機能を持つ。
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