“量産”に使える金属3Dプリンタ、カギとなる技術を三菱重工工作機械が開発:金属3Dプリンタ(1/2 ページ)
三菱重工工作機械は海外市場に向けて金属3Dプリンタの展開を開始することを発表した。2019年5月20〜23日に米国デトロイトで開催される先端立体造形技術の見本市「RAPID+TCT2019」で、金属3Dプリンタ「LAMDA」を披露し、世界初となる関連技術「モニタリングフィードバック機能」や「ローカルシールド機能」などを紹介する。
三菱重工工作機械は2019年5月16日、海外市場に向けて金属3Dプリンタの展開を開始することを発表した。2019年5月20〜23日に米国デトロイトで開催される先端立体造形技術の見本市「RAPID+TCT2019」で、金属3Dプリンタ「LAMDA」に加え、新たに開発した「モニタリングフィードバック機能」や「ローカルシールド機能」などの技術を紹介する。これらの関連技術は「実用レベルで実装されたのは世界で初めて」(同社)だとしている。
グローバル展開のカギを握る金属3Dプリンタ
三菱重工工作機械では、グローバルの売上高拡大や新たな産業機械領域の拡大を進める方針を示しているが、その原動力として重要視しているのが金属3Dプリンタである。三菱重工工作機械 代表取締役社長 CEO 岩崎啓一郎氏は「グローバル化とデジタルイノベーションにより新規事業領域を拡大する方向性を打ち出しているが、その成長の中心となるのが金属3Dプリンタだと考えている」と期待感を語る。
三菱重工工作機械は、国家プロジェクトとして進められてきた技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)に参加しており、この研究成果の一部を使った同社初の金属3Dプリンタ「LAMDA」を2018年12月に発表。2019年3月には、初号機を滋賀県工業技術総合センターに納入している。
ただ、TRAFAMは2018年度(2019年3月期)までの5カ年で進められてきた研究開発プロジェクトであるため、TRAFAMで得た研究成果全てを使った金属3Dプリンタおよび、関連技術については、2019年度(2020年度3月期)から市場投入が進められることになる。
今回、三菱重工工作機械では、金属3Dプリンタで最終製品の量産に使うためのカギを握る技術として、一般的な大気中でもワークの酸化を防いで積層造形を可能とする「ローカルシールド機能」と、ワークの造形状況を複数のセンサーで取得し最適なフィードバック制御をかける「モニタリングフィードバック機能」を開発した。
パウダーDED方式の弱点をカバー
三菱重工工作機械が現在注力しようとしている金属3Dプリンタは、金属粉末を吹き付け、それにレーザーを当てて溶かして形を造形するパウダーDED(Directed Energy Deposition)方式とされるものである。しかし、金属が高温で溶ける際に、空気中の酸素と化学反応をして酸化し、酸化物となると積層部分がもろくなり、精度の高い造形ができなくなるという課題があった。
これらを防ぐために、従来はチャンバーなどで全てを覆い、酸素が入らないようにして造形してきた。ただ、これではチャンバーなどにより機器設置スペースが大きくなる他、費用なども非常に大きくなる。
これらを背景に、三菱重工工作機械が開発したのが「ローカルシールド機能」である。これは、造形時に酸素が入るのを防ぐために、ガスを吹き付ける「シールドガス」を三菱重工工作機械が発展させたものだ。単純にガスを吹き付けるだけであれば、酸素が入り込んでしまうが、「ローカルシールド機能」は三菱重工工作機械が得意とする流体解析技術を活用することで、ガスを吹き付けた際の空気の流れを解析し、限りなく酸素が入り込みにくい吹き付け方を開発した。これにより通常の大気中でも精度の高い金属積層造形が行えるようになるという。
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