MR技術も生かした「AGVの目」、デファクトスタンダードを狙うキヤノンの自信:無人搬送車(2/2 ページ)
労働人口減少が進む中で工場でもAGVへの注目が高まっている。その中で「AGVの目」に新たに参入したのがキヤノンだ。新たに投入した映像解析ソフトウェア「Vision-based Navigation System for AGV」のポイントについてキヤノンに聞いた。
日本電産シンポと工場で実証を推進
もともと、デジタルカメラなど映像機器や光学技術で定評のあるキヤノンだが、そもそもAGV向けの映像解析技術を提供するにはどういう経緯があったのだろうか。
岡本氏は「もともとは『移動体の目』ということで開発を進めており、キヤノン内の映像技術を組み合わせて移動体の映像処理を行う根幹となる技術の開発は行っていた。ただ、ある程度技術開発が進むと、“目をどこに載せるか”によって左右される点が増えてくる。その中で、工場の省力化などから自律型AGVへの関心が高まっている点や、日本電産グループとの関係もあり、まずはAGV向けに特化する形で開発を進めた」と経緯について説明する。
日本電産グループとの協業は2018年4月から開始し、2019年3月からはキヤノンの工場で「Vision-based Navigation System for AGV」を搭載した日本電産シンポ製AGVのプロトタイプによる実証実験を開始。実際に使用環境でのニーズのフィードバックを受けながら、機能や性能のブラッシュアップを行ったという。2020年8月5日には、日本電産シンポが「Vision-based Navigation System for AGV」を搭載した自律型AGV「S-CART-V」を発売することを発表している。
中原氏は「現在『Vision-based Navigation System for AGV』に盛り込んでいる機能も、最初から全てが想定できたわけではなく、日本電産グループとの協業により実際の使用環境からのフィードバックを受けて、用途に応じた知見を蓄積し、実現できたものだ。むき出しの技術のままではなく、実用レベルでの機能や性能を実現できているという点も差別化のポイントだと考えている」と強調する。
「AGVの目」としてデファクトスタンダードに
「Vision-based Navigation System for AGV」の実証は、日本電産グループと共同で行ったが、技術としては「映像解析ソフトウェアはキヤノン、AGVの台車などは日本電産グループと役割分担を明確にして行った。技術の切り分けも明確に行っており、『Vision-based Navigation System for AGV』そのものは他のAGVメーカーにも展開していく」と岡本氏は述べている。
今後は、他のAGVメーカーの他、サービスロボットや警備ロボットなど人の歩行ペース程度の移動体に向けて提案を進めていくという。「基幹となる技術はどんな移動体でも対応できる標準的な仕様になっている。パートナーとの協業を通じて、市場ニーズに合わせた追加機能の開発などを検討している。これらを通じて『移動ロボットの目』のデファクトスタンダードとしてのポジションを作りたい」と岡本氏は今後の目標について語っている。
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