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自動車開発の無駄なExcel作業解消へ、実走行データの分析自動化で2社が協業製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

データ分析ソリューションを展開する米国Teradataの日本法人である日本テラデータ(以下、テラデータ)と産業用IoTのデータ収集基盤を展開するアプトポッドは2020年8月4日、自動車業界の開発のデジタルトランスフォーメーション(DX)において協業することを発表した。

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試験走行によるデータの収集と活用

 具体的には自動車開発の現場での実験計測フローの効率化を中心に提案を進めるという。実車による試験走行とその計測データ取得は、自動車開発には必要なフェーズだが、マニュアル作業が多く、人的ミスも多い上に、多くの時間と労力がかかる。その一方で最終報告書でしかナレッジが共有されず、試験中に得られたデータが生かされていない状況が生まれている。

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実験計測フローにおける課題(クリックで拡大)出典:テラデータ

 そこでこれらを「intdash」と「Vantage」により自動的に一貫してデータ取得を行えるようにし分析や見える化による得られた成果をさまざまな関係者が利用できるような仕組みを構築する。

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計測データ分析による業務効率化のイメージ(クリックで拡大)出典:テラデータ

協業が生きる3つのユースケース

 協業の強みが発揮できる具体的なユースケースとしては主に3つがあるという。1つ目は「市場走行結果データの抽出と活用」だ。試験走行車の走行データを蓄積し、そこからGPSデータなどを基に特定エリアの走行データだけを抽出。そこに天候や信号機などの情報を組み合わせて、より条件やシーンなどを具体化した分析などを行う。「従来もマニュアル作業やExcelでの人手作業を加えればできなくはなかったが非常に大きな手間が必要だった。これらを大幅に軽減できる」(テラデータ ビジネスコンサルティング事業部 マネージャーの矢野寛祥氏)。

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市場走行結果データの抽出と活用のイメージ(クリックで拡大)出典:テラデータ

 2つ目は「ECU適合の高速化と設計との連携」である。ECU適合のため試験走行を行ったデータをリアルタイムで設計部門のシミュレーション結果と比較し、すぐに走行パターンの指示やパラメータの書き換えなどができるようにする。従来はドライバーが走行したデータを走行後に受け取り、それを解析スタッフが分析して新たな方向性を決めて再度試験走行をするというようなサイクルで「人手も時間も多くの手間がかかった」(矢野氏)。これを「intdash」と「Vantage」を組み合わせることで、リアルタイムで走行情報を収集し、すぐに分析を行い、結果をすぐにフィードバックできるようになる。「この仕組みの良い点は、解析スタッフは試験走行の場にいる必要がないという点だ。世界各地域での試験走行の結果をオフィスでまとめて受けることができる」と矢野氏は利点を強調する。

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市場走行結果データの抽出と活用のイメージ(クリックで拡大)出典:テラデータ

 3つ目が「実走行データからのRDEルート作成」である。ドイツのフォルクスワーゲンによる排出ガス不正により、路上での実走行環境下における排出ガス検査が2022年から義務化されるが、RDEルートには詳細な条件があり、そのルート作成だけでも容易ではない。そこで、試験車両による実走行データを集め、これらの走行データと地図データ、各走行パターンなどを結合して、RDEルートを作成するというような使い方である。「従来は手作業でマッチングしていたが膨大な手間が必要になっていた。またそれにより得られたルートで走行した結果、試験条件を満たせずに終わるケースもあり、負担が大きかった。それを大きく軽減可能になる」(矢野氏)としている。

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市場走行結果データの抽出と活用のイメージ(クリックで拡大)出典:テラデータ

 現状では「2つ目のユースケースのECU適合での活用で非常に強い引き合いをもらっている」(矢野氏)としている。今後は「まずは日本の自動車メーカーを中心に提案を進め、グローバルや他の産業にも展開していく。建機や農機、ロボットや製造機械などを視野に入れている」(石井氏)としている。また、坂元氏は「クルマではCANのデータを使うことが多いが、トラックやトラクターではSAE J1939であるなど、業界ごとに制御の規格やデータ仕様などが異なっている。これらを個別にヒアリングして体系化していき、カバー範囲を広げていく」と語っている。

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