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CASE時代に向けて開発スピード10倍を目指すデンソー、試作/図面レスへの挑戦SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019(1/3 ページ)

デンソーは「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019 東京」において、「3次元設計データの徹底活用 〜試作・図面レス化の成果と課題」をテーマに講演を行った。「開発スピード10倍」の達成に向け、試作レス/図面レスにどう取り組んでいるのか?

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デンソー 先端技術開発部 モビリティ実験室の山本陽介氏
デンソー 先端技術開発部 モビリティ実験室の山本陽介氏

 自動車業界は「100年に一度の大変革」といわれるCASE時代を迎え、「クルマ」という存在は従来の「輸送機器」の枠を飛び越えた「サービス」へと変わり、より高付加価値な存在へとなりつつある。自動車メーカーやサプライヤー各社は将来の生き残りをかけたさまざまな改革に取り組んでいる。大手サプライヤーであるデンソーもその1社であり、従来比で「開発スピード10倍」を目指し、3D CAD/3Dデータを活用した“試作レス”および“図面レス”の実現を目指しているという。

 本稿では、3次元設計ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019 東京」(開催:2019年11月8日)から、デンソーの講演「3次元設計データの徹底活用 〜試作・図面レス化の成果と課題」をお届けする。同講演には、デンソー 先端技術開発部 モビリティ実験室の山本陽介氏が登壇した。

10倍の開発スピードをいかに実現するか

 デンソーはトヨタグループに属する大手部品サプライヤーである。同社の2018年度の売上収益(連結)の総計は5兆3628億円。その内訳としては、エアコンなどのサーマル(熱関連)システム、パワートレインシステム、電気・電子システム、ADAS(高度運転支援システム)関連など、自動車部品およびシステムが大半を占める。他にはFAや農業、ヘルスケア、化粧品など多岐にわたり事業を展開する。ここ数年のFA分野は、将棋用ロボット「電王手くん」「電王手さん」でも話題になり、2019年10月には産業用ドローンのサービスも提供開始している。

デンソーのモビリティシステムに関する取り組み(出典:デンソー)
デンソーのモビリティシステムに関する取り組み(出典:デンソー)

 自動車業界では「CASE」(コネクテッド、自律運転、シェアリング、電動化)に注目が集まり、従来の自動車業界以外からの新規プレイヤーの参入増加が予想されているため、自動車開発においてより一層のスピード感が求められつつある。デンソーは、これからますます競争が厳しくなる自動車開発に向け、「開発スピード10倍」を目標に掲げ、“作らない検証”の実現を目指す。

取り組みの背景(出典:デンソー)
取り組みの背景(出典:デンソー)
作らない検証の実現(出典:デンソー)
作らない検証の実現(出典:デンソー)

 山本氏が所属する技術開発センターの技術者は、基礎設計や将来の技術アイデアについて研究する「技術職」(150人)と、試作や評価が中心の「技能職」(460人)に分かれている。この両者が協調しながら、研究、企画・構想、製品設計・試作、生産準備、量産試作、量産というプロセスを進めていき、次世代モビリティを作り上げていく。

デンソーの製品開発ステップと組織(出典:デンソー)
デンソーの製品開発ステップと組織(出典:デンソー)

 技術職は、自動運転やシェアリング、電動化、環境対策といった先端の取り組みについて企画・研究を行う。そして、技術職の研究を製品として具現化するために、技能職が集まる先端技能開発部では、価値実証や開発試作、評価に取り組む。

技術職と技能職の取り組み(出典:デンソー)
技術職と技能職の取り組み(出典:デンソー)

 従来、試作と評価、設計へのフィードバックというサイクルを何度も回すことで精度を高めながら車両の設計を完成させてきた。しかし、今後、このようなサイクルを都度回していては、市場が要求するスピード感には到底追い付くことができない。そこで、設計の初期段階からCAEとVR(仮想現実)システムを活用し、工学性能を作り込むことで極力試作を行わないプロセスの実現に取り組んだという。

 どうしても試作が必要な場合は、1回だけで済ませるようにする。また、図面作成を削減することで、設計と機械加工との間での図面化や中間データ変換といったルーティン作業をなくしていく。それらの施策により、従来のプロセスと比較して10倍のスピードアップを目指す。

「作らない検証」の概要(出典:デンソー)
「作らない検証」の概要(出典:デンソー)
試作のムダ時間の削減(出典:デンソー)
試作のムダ時間の削減(出典:デンソー)

 このプロセスの実現に当たっては、各プロセスで使うソフトウェアをシームレスに連携させることと、ソフトウェアの操作性を高めることによる生産性アップを目指した。その観点から複数のCADソフトウェアを比較、検証したという。

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