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デジタルツインがあれば、損失10億円のリコールを避けられた事例で学ぶデジタルツイン(1)(1/2 ページ)

製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第1回は、製品開発段階で求められるデジタルツインに着目する。

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 こんにちは。本連載では、3回にわたって、製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について述べていきたいと思います。

 昨今の製造業のプロセス改革という文脈の中で、インダストリアルIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)とともに、デジタルツインという言葉もよく聞かれます。一方、デジタルデータを用いること自体は今までも広く行われてきました。デジタルツインとは、既存の製造業におけるデジタル活用と何が異なるのでしょうか。

 デジタルツインとは、開発中の製品または生産システムについて、生産のプロセスや性能を正確に表す複数の領域を包含するデジタルモデルです。つまり、単なるCADデータや、MES(製造実行システム)上のオーダー情報ではなく、それらがお互いにつながり、フィードバックのループを形成することが必要となります(図1)。

図1
図1 デジタルツインの全体図(クリックで拡大) 出典:シーメンス

 デジタルツインの重要な目的の1つは、製品性能および生産工程のシミュレーションを高い精度で行うことにより、製品の要件やコスト/開発期間の目標を達成することです。しかしそのためには、デジタルツインのモデルが最高の精度と現実事象への高い忠実性を有することが不可欠となります。

製品開発段階におけるデジタルツイン

 本連載の第1回では、製品開発段階におけるデジタルツインに着目します。

 製品開発段階においては、その過程において複数の抽象度/詳細度、メカニカル、エレクトロニクス、ソフトウェアなど多くの数学的モデルと仮想表現で構成されたデジタルツインを定義することが可能です。このデジタルツインを利用して、複合分野のモデル検討および物理現象をシミュレーションすることにより、不具合を低減し、製品の性能特性を高い精度で予測分析することが実現できます(図2)。

図2
図2 複合領域のデジタルツインとシミュレーション(クリックで拡大) 出典:シーメンス)

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