コンセプトカーそのままに、日産の新型EV「アリア」は2021年発売:電気自動車(2/2 ページ)
日産自動車は2020年7月15日、電気自動車(EV)の新モデル「アリア」を発表した。2019年10月に東京モーターショーで披露した「アリア コンセプト」の内外装をなるべく変えずに製品化することを意識した。
OTAはマルチメディア以外にも対応
インテリアも、アリア コンセプトに盛り込んだ提案を踏襲した。E/E(電子電気)アーキテクチャも、無線ネットワークによるソフトウェアアップデート(OTA:Over-The-Air)で機能を追加できる拡張性を持たせて新開発した。
コックピット周りは12.3型の大型ディスプレイ2枚と、操作に合わせて振動するハプティクススイッチで構成されている。物理的なスイッチはなく、ハプティクススイッチはクルマの電源を入れるとアイコンが浮かび上がる。すっきりとしたインテリアを生かすため、ディスプレイの追加が必要な電子ミラーの採用は見送った。
メーター用とインフォテインメントシステム用のディスプレイはシームレスに連携する。インフォテインメントシステム用の画面でスワイプ操作を行うと、メーター用のディスプレイに情報表示を移動させることが可能で、ドライバーの好みに合わせて表示する情報のレイアウトを変更できる。メーター用のディスプレイには、走行に必要な情報に加えて、ナビゲーション画面や音楽の情報などを表示できる。インフォテインメントシステム用のディスプレイは、スマートフォンのような感覚で直感的にタッチ操作できる。
シームレスな体験を提供するため、コネクテッド機能も強化した。すでに北米では2017年から「アルティマ」でマルチメディア向けにOTAを提供してきたが、アリアではインフォテインメントシステム以外も対象にOTAを提供する。現時点では、乗り味を変えるドライブモードの追加やナビゲーションシステムの更新、ユーザーインタフェースのアップグレードを予定している。
アリアに搭載する自動運転レベル2相当のプロパイロット2.0を、レベル3にアップグレードするサービスは行わない方針だ。レベル3ではドライバーが周辺を常時監視する必要がなくなるため、システム側で安全のために考慮する要因が増えるためだ。
デュアルバンクメモリ
更新可能なソフトウェアを扱う主要なユニットには「デュアルバンクメモリ」を採用。サブメモリに停車中や走行中に新しいソフトウェアをダウンロードしてから、メインメモリと切り替えることにより、短時間でアップデートを完了させる。
OTAは今後展開するコネクテッド機能を持つ車両を対象に、EVに限定せず搭載していく。コネクテッドによる機能の拡張性だけでなく、サイバーセキュリティの担保やプライバシーの保護、機能安全を両立した。
アリアのインフォテインメントシステムはソフトウェアのソースコードで3000万〜4000万行の規模があるという。デュアルバンクメモリはこの規模を前提に、さまざまな機能を追加できる技術的な拡張性を提供する。
コネクテッド機能はこれまでにも地域ごとのニーズを踏まえて提供しており、OTAで更新するソフトウェアも同様だという。例えば、北米では既に、スマートフォンでエンジンを始動したり、宅配の荷物を配達員が置くために遠隔でトランクを開けたりする機能を提供してきた。アリアに搭載したE/Eアーキテクチャは、こうした地域ごとのニーズにOTAで対応するための技術的な土台となる。
音声エージェントは「Amazon Alexa」に対応。音声入力による操作で、音楽再生や天気予報の確認、家族などへの電話など車内のシステム操作が行えるだけでなく、車内から自宅の照明やエアコンなど家電を操作することも可能だ。また、自宅にあるAlexa搭載スマートスピーカーに話しかけるとアリアの充電残量などを確認できる。通信状況が悪い場合はオンボードの音声エージェントで基本的な操作は行える。
スマートフォンと車両の連携も強化した。これまではリーフでも出発前にスマートフォンで行き先を設定してナビゲーションシステムに転送する機能はあったが、出掛ける直前でなければ利用できなかった。
アリアでは、スマートフォン内のカレンダーアプリの情報を参照して先の予定に合わせた行き先の設定、車両への転送が可能になった。スマートフォンで行き先を設定する際には、道中でどのように電力を消費するか予測し、充電ステーションの立ち寄りも提案する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- EV向け2モーター4WDや大型ディスプレイの統合HMI、コンセプトカーの外へ
日産自動車が「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)で披露したコンセプトカーの1つが、クロスオーバーSUVタイプの電気自動車(EV)「アリア コンセプト」だ。アリア コンセプトでは、駆動システムやインテリアに最新技術を搭載するとうたう。これらの技術は単なるコンセプトではなく、現実的に開発が進められているものもある。 - 日産のEVの中心はクロスオーバーSUVと軽が担う、搭載するのは「リアルな技術」
日産自動車は2019年10月23日、「第46回東京モーターショー2019」(一般公開日:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)において、クロスオーバーSUVタイプの電気自動車(EV)「アリア コンセプト」を世界初公開した。 - 「ChaoJi(チャオジ)」は超急速充電の世界統一規格となるのか
日中共同による超急速充電規格が大きな進展を見せている。ネーミングを「ChaoJi(チャオジ:超級)」とし、仕様書発行は2020年末までを目指して進めているようだ。なぜここまで急激に進展してきたのか、どのような仕様で、急速充電器や車両はどう変わるのか、今後の課題は何なのか、これらについてCHAdeMO協議会への取材を敢行した。 - 電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁
Stay at Home! まるでこの言葉が世界中の合言葉のようになってきている。そのため、まとまった時間が出来たことを活用して、長年考えていたことを取り纏めてみた。それは、「電気自動車(EV)とはいったい何なのか!」という問いである。 - 日産プロパイロット2.0、ステアリング手放しの実現には高精度地図が不可欠だった
日産自動車は2019年5月16日、横浜市の本社で会見を開き、運転支援システムの第2世代「プロパイロット 2.0」の概要を発表した。2019年秋に日本で発売する「スカイライン」を筆頭に、海外市場や他のモデルでもプロパイロット 2.0を展開する。 - メルセデスベンツがOTAで自動運転を追加可能に、2024年以降の新型車
Mercedes-Benz(メルセデスベンツ)とNVIDIAは2020年6月23日、自動運転技術を搭載する車両のコンピューティングアーキテクチャを共同開発し、2024年から量産すると発表した。このアーキテクチャは「Sクラス」から「Aクラス」まで全ての次世代モデルに搭載する。 - 日産がクルマとソフトの両面を知る技術者育成を強化、研修施設を公開
日産自動車は2019年7月3日、車載ソフトウェア開発に関する社内研修施設「日産ソフトウェアトレーニングセンター」(神奈川県厚木市)を報道陣向けに公開した。日産は自動車工学に精通したソフトウェア開発人材の丁寧な育成で、競合他社との差別化を図る狙いだ。