日産のEVの中心はクロスオーバーSUVと軽が担う、搭載するのは「リアルな技術」:東京モーターショー2019
日産自動車は2019年10月23日、「第46回東京モーターショー2019」(一般公開日:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)において、クロスオーバーSUVタイプの電気自動車(EV)「アリア コンセプト」を世界初公開した。
日産自動車は2019年10月23日、「第46回東京モーターショー2019」(一般公開日:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)において、クロスオーバーSUVタイプの電気自動車(EV)「アリア コンセプト」を世界初公開した。
同社のEVの新しいスタンダードとしての方向性を示すコンセプトモデルとなる。クロスオーバーSUVがEVになることでデザインやパッケージ、運転する楽しさがどのように変わるかも表現している。デザイン言語には、シンプルで力強くモダンな表現で日本らしさを取り入れた。また、「単なるコンセプトカーではなく、『リーフ』の次のEV、より多くの方に乗ってもらうEVとして、現実的に開発に取り組んでいることを示す」(日産自動車)という思いも込められている。
この他にも、軽自動車規格のEVのコンセプトモデル「IMk」を披露。IMkはアリア コンセプトよりも後の製品化を目指したコンセプトカーだが、両モデルが今後の日産自動車のEVの中心となる。
次のEVは2モーター4WD
アリア コンセプトは「ニッサンインテリジェントモビリティ」の新たな象徴として、さまざまな最新技術を採用する。駆動系は前後に高出力なモーターを配置したツインモーター4輪制御システムを搭載。緻密なトルクコントロールを生かし、高次元の発進、加速性能を実現するという。
さらに、駆動用モーターとステアリング、ブレーキを統合制御することにより、雪道やぬかるみなど滑りやすい路面でも優れたトラクション性能を発揮。ドライバーの操作に応じて駆動力とブレーキを最適にコントロールする。この統合制御技術には、「GT-R」に搭載されているFR車向けトルクスプリット4WDシステムや、「エクストレイル」のインテリジェント4×4システムなどの開発から得たノウハウが生かされている。
運転支援システムは、「プロパイロット2.0」を搭載。高速道路の本線に合流してからナビ連動ルート走行を開始すると、ルート上にある高速道路の出口までの走行を支援し、同一車線内であればステアリングから手を離すことができる。アリア コンセプトでは、プロパイロット2.0の作動に合わせてインテリアのライトの色が切り替わり、ハンズオフ走行が可能になるとリラックスした雰囲気を演出する。また、「プロパイロット リモートパーキング」により、スマートフォンや専用デバイスでドライバーがクルマを降りたあとに自動駐車させることができるという。
EV向けの機能としては、走行中に自動で充電スポットを見つけ、目的地までの充電計画を示す「スマートルートプランナー」を搭載する。ドライバーが充電スポットに近づくと充電口が自動で開錠され、充電状況を示すという。オフィスや自宅で駐車している間は、駆動用バッテリーの電力を住居やオフィス、電力網に供給する。
また、EVは外気を取り込むフロントグリルが不要になることから「シールド」という新しいパーツを採用。「Vモーション」のシグネチャが発光するとシールドの幾何(きか)学模様が浮かび上がるだけでなく、周辺監視用のレーダーなどのセンサーをフロントデザインに自然に融合させるという。車内は、バッテリーの最適配置によってフラットなフロアを実現している。シートは超極薄フレームを採用し、乗員を快適にサポートしながら広々とした室内空間と優れた視界を生み出す。
全長 | 全幅 | 全高 | |
---|---|---|---|
アリア コンセプト | 4600 | 1920 | 1630 |
参考)エクストレイル | 4690 | 1820 | 1740 |
単位はmm |
アリア コンセプトは、スマートフォンと車両が連携し、目的地をカーナビゲーションシステムとスマートフォンで共有したり、スマートフォンを基にドライバーを識別して車両を好みの状態にセッティングしたりする。また、「バーチャルパーソナルアシスタント」が走行中に必要な情報を提供するため、ドライバーは自ら情報検索をする必要がないという。ルートの途中で友人をピックアップする場合、友人のスマートフォンと車両に搭載されたビデオチャット機能がリンクし、友人がいる正確な位置を車両のディスプレイに示す。
アリア コンセプトはダッシュボード周りのボタンやスイッチは最小限にし、車両のスタートボタンとディスプレイモニター用の操作ノブ、エアコン操作用のボタンのみとした。主な操作はインストゥルメントパネルのハプティック操作ボタンで行う。ナビゲーションシステムやユーザーインタフェースのグラフィック、クルマの走行制御などは、ファームウェアの無線ネットワークによるアップデート(FOTA:Firmware Over-The-Air)で最新の状態に保つことができる。
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