換気時の熱ロスを削減できる「全熱交換形換気システム」とは何か:メカ設計ニュース
パナソニック エコシステムズは全熱交換素子によって換気時の熱ロスを可能な限り抑制する「全熱交換形換気システム」に関するオンラインセミナーを開催した。機械換気方式と全熱交換換気の手法を組み合わせることで、省エネと室内環境の快適性向上に貢献する。
パナソニック エコシステムズは2020年6月26日、換気扇に搭載した全熱交換素子によって換気時の「熱ロス」を可能な限り抑制する「全熱交換形換気システム」に関するオンラインセミナーを開催した。
全熱交換形換気システムの説明は同社 IAQビジネスユニット 営業部 住宅開発営業課の林義秀氏が担当した。住宅や店舗、ビルなどの建屋で換気を行う際には「換気と冷暖房の使用をどの程度バランス良く行えるか」が、重要な課題点として浮上する。「換気とは空気を入れ替えることだが、この際、空気が含んでいる熱や水分も同時に入れ替える。せっかく冷暖房で温度調整を加えた空気を排出して屋外の空気を給気してしまうと、その分空調エネルギーのロス(熱ロス)が大きくなってしまう」(林氏)。
これを解決するためにパナソニック エコシステムズが推奨するのが全熱交換形換気システムだ。同システムは換気時の給排気方式の1種類である「第1種換気方式」に、熱交換素子によって空気の熱交換を図る「全熱交換換気」方式の組み合わせにより構成されている。
第1種換気方式とは窓の開閉による「自然換気」ではなく、換気扇などの空調設備を用いた「機械換気」で給気と排気を行う換気方式のことである。機械換気には機密性の低い建屋であっても空気の流れを制御しやすく、安定した換気効果が得やすいという利点がある。一方、機械換気と自然換気を組み合わせる「第2種換気方式」や「第3種換気方式」は、空気の経路はある程度確保できるものの、第1種換気方式と違い、住宅など気密性の低い建屋では換気効果が薄れやすい。このため林氏は換気方式として、機械換気で構成される第1種換気方式を推奨する。
全熱交換換気は、伝熱板が積層されている全熱交換素子を用いた空調設備による換気のことだ。ここで全熱とは、温度に影響する乾いた空気が持つ熱(顕熱)と、主に湿度に影響する空気中の水蒸気が持つ熱(潜熱)を合わせたものを意味している。全熱交換素子を用いることで、外気の温度と湿度を室内の全熱に近づけて給気できる。「全熱交換素子は熱ロスを抑制するだけでなく、冷たい外気を取り込むことで生じるひんやり感を緩和するなど、屋内快適性の維持にも貢献する」(林氏)。
林氏は換気システム開発に関する展望として「今後は省エネの観点から、店舗などで使う業務用の換気システムでは、店舗内の在室人数の変化などに応じて給気/排気の力を変化させて、室内環境を適正状態に保つ仕組みづくりが重要になるだろう。全熱交換形換気システムをはじめ、換気による空気質の向上と省エネ、快適性を両立する提案活動に今後も取り組んでいきたい」と語った。
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