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発想の転換から生まれた「10年間ファン掃除不要」を実現するレンジフードオイルスマッシャー開発秘話(1/2 ページ)

「10年間ファン掃除不要」を実現するレンジフードを開発した富士工業。「いかに清掃性を高めるか」ではなく「最初から汚さない」という発想の転換から生まれた「オイルスマッシャー」機能はどのようにして誕生したのか。オイルスマッシャーの設計担当者に聞いた。

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 清掃性を高めるくらいなら、最初から汚さなければいい――。

 そんな発想の転換から生まれたレンジフード(換気扇)をご存じだろうか。富士工業が先進技術を集結し、独自開発した「OILSMASHER(オイルスマッシャー)」機能搭載レンジフードだ。

 富士工業の創業は1941年のこと。1973年からレンジフードの開発・製造に着手し、現在、国内トップシェアを誇るレンジフード専門メーカーに成長。2018年から、次なるステージへ向けて飛躍すべく、海外で長年親しまれてきたブランド「FUJIOH」を再定義し、日本を含むグローバル統一ブランドとして展開を開始している。

 オイルスマッシャー搭載フードは2014年に販売を開始。企画台数は月500台ほどであったが、初年度実績で月2000台、翌2015年度には月4000台と大きく販売台数を増やし、現在、同社のフラグシップ商品となっている。

オイルスマッシャー搭載フード「CLRL-ECS」シリーズの製品イメージ
オイルスマッシャー搭載フード「CLRL-ECS」シリーズの製品イメージ ※出典:富士工業 [クリックで拡大]

 「いかに清掃性を高めるか」という従来のレンジフードの常識を覆し、「最初から汚さない」という発想の転換から生まれたオイルスマッシャー機能はどのようにして企画、開発されたのか。オイルスマッシャーの設計を担当する、同社 商品開発本部 設計部 設計2課 係長の鈴木勝氏に話を聞いた(※1)。

※1:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考慮し、メールベースでのインタビュー取材となった。

 なお、鈴木氏は主に国内向けレンジフードの設計・開発業務に従事。自社オリジナル製品はもちろんのこと、各OEM向け製品を含めた新製品の機構設計などを担当している。また関連業務として、既存製品の生産性改善や品質向上、VA(価値分析)/VE(価値工学)にかかわる各種案件の立案、検証、設計変更などの業務も手掛けている。

「10年間ファンの掃除不要」を実現したオイルスマッシャー

――オイルスマッシャー機能とはどのようなものか? その特長や機能について教えてほしい。

鈴木氏 オイルスマッシャーとは、ファンとレンジフード内部(ケーシング)への油の侵入をブロックする独自技術により、10年間ファンの掃除を不要(※2)とする機構のことだ。

※2:厳密には、レンジフード内部が汚れないという意味ではない。またオイルスマッシャー搭載製品の場合、同社普及製品(BDR-3HL:1年に1回ファンを清掃する前提)を1年間使用した際に付着する油の量と同等の汚れになるまで約10年間かかることから、「10年間ファンの掃除不要」としている。

 調理中に生じる油煙を吸い込む際、高速回転するスリットの開いた金属製の円盤(ディスク)が煙に含まれる油の大半をキャッチし、遠心力によってオイルガードに油を回収する仕組みだ。このディスクは水で簡単に油を浮き上がらせる親水系コートが施されており、油汚れを簡単に水で洗い落とすことができる。

オイルスマッシャー搭載フードの構造と仕組み
オイルスマッシャー搭載フードの構造と仕組み ※出典:富士工業 [クリックで拡大]

――従来製品・競合製品と、オイルスマッシャー搭載製品との大きな違いはどこにあるのか?

鈴木氏 従来製品・競合製品の多くは、レンジフードの内部の汚れを簡単にお手入れできるような工夫が施されている。例えば、撥油性の高い塗装や親水系塗装などをフィルターやファンにコーティングしたり、ファンをワンタッチで取り外せるようにしたりしている。

 これに対し、オイルスマッシャーは着眼点を変え、「油をレンジフードの内部に入る前に捕集し、できるだけ汚さないこと」をコンセプトに掲げた。内部の汚れが軽減されることで、掃除の手間や掃除に必要な水や洗剤などの使用料を削減できる。さらに、レンジフード内部だけでなく、ダクトや壁の汚れ付着も軽減できる。

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