住友ベークライトが生産ラインをデジタル化、NECとの共創で生産効率を20%向上:スマートファクトリー
住友ベークライトは、NECとの生産技術のデジタル化に向けた共創を通じて、製造工程にAIやIoTなどの最先端技術を導入することで製造工程の自律制御を実現したと発表した。国内主力4工場の生産ラインで生産効率を20%向上したという。
住友ベークライトは2020年6月16日、NECとの生産技術のデジタル化に向けた共創を通じて、製造工程にAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの最先端技術を導入することで製造工程の自律制御を実現したと発表した。国内主力4工場の生産ラインで生産効率を20%向上したという。今後は、国内の他の生産拠点や生産ラインへの展開を図り、海外拠点への導入に向けた環境整備も進める。
今回、デジタル化の対象となった住友ベークライトの工場は、フェノール樹脂などの高機能材料を生産する静岡工場(静岡県藤枝市)、建築壁装材を生産する尼崎工場(兵庫県尼崎市)と鹿沼工場(栃木県鹿沼市)、半導体封止材の生産子会社である九州住友ベークライト(福岡県直方市)の4拠点だ。工場内の装置の稼働情報などをIoTで可視化するとともに、AIが各工程における制御ルールを分析することで、従来難しかった機能性化学品のバッチ連続型生産ライン(一定数量を品目ごとに連続して生産するライン)におけるデジタル化を実現した。
今回の生産技術デジタル化の特徴は3つある。1つ目は「通信規格の異なるデータの収集」で、FAとITシステムの間のエッジコンピューティング領域のシームレスな連携を目指す、製造現場のIoT化を進めるオープンプラットフォーム「Edgecross」を活用した。異なるメーカーの装置からの出力情報について通信規格の差異を吸収し、複数種類のデータを工場全体で分析できる環境を構築したという。
2つ目は「AIを活用したデータ分析と異常の見える化」である。製造工程の各所に取り付けたセンサーを通じて、装置の稼働情報、品質に関わる評価情報などを収集し、自動的に分析を行えるようにした。NECのAI技術の一つである「インバリアント分析技術」を採用し、リアルタイムに得られる計測データからいつもと違う状態を発見し、その違いを数値化した。
3つ目は「AIを活用した制御ルールの設定」だ。運用上規定されている装置の制御ルールに加えて、AIを活用することで、熟練技術者の経験に裏打ちされていた装置制御に関する暗黙知を制御ルールとして見える化し登録。製造工程の自律制御、品質の安定化と向上につなげたとする。
製造工程の自律制御は、新型コロナウイルス感染症への対応にもつながる3密防止の生産体制の確立が可能になるため、今後海外拠点にも展開していく計画だ。さらに、住友ベークライトはNECとの共創により、ITとケミカルの両方に精通する“ITケミスト”の育成にも取り組んでいくとしている。
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