新型コロナ影響が2カ月で拡大、在宅勤務やコミュニケーションに課題も:MONOist/EE Times Japan/EDN Japan読者調査(3/3 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japanのアイティメディア製造業向け3媒体は「新型コロナウイルス感染症のモノづくりへの影響に関するアンケート調査」を実施した。調査は2020年3月に続いて2度目で、欧米での感染拡大を受けた市場の混乱、在宅勤務の拡大などによる業務の変化などの影響が表れた。
テレワーク、実際のところどうですか?
テレワークの導入状況について回答者に尋ねたところ、50.3%が「テレワークできているが、出社していた時ほどは業務が進まない」と答えた。一方で、「出社していた時と変わらないくらいテレワークで業務ができている」という回答は33.9%だった。この他、「テレワークができていない、業務が進んでいない」(9.4%)、「そもそもテレワークが許されない」(6.4%)となった。
「テレワークできているが、出社していた時ほどは業務が進まない」という理由としては、不安定なインターネット通信環境やVPN接続のライセンス数不足が多く挙げられた。実機評価やシミュレーション、実験、会社から持ち出せない資料や書類などもテレワークでの業務が進まない要因となっているようだ。「テレワークができていない、業務が進んでいない」「そもそもテレワークが許されない」の理由としては、不十分なセキュリティ対策や社内ネットワークへのアクセスへの制限が挙がった。
「出社していた時と変わらないくらいテレワークで業務ができている」という回答者は、PCで業務が進められることや、遠隔会議による効率化、自宅で作業に集中できることなどメリットに言及した。
「今、困っていること」
「今、最も困っていることは何か」を自由記述で尋ねたところ、さまざまな回答が寄せられた。多かったのは社外とのやり取りに関する声だ。感染拡大防止で移動を自粛する期間が長く続いたため、新規開拓や既存の取引先への訪問ができない他、取引先が絡む作業の遅延が起きたもようだ。また、リアルタイムなコミュニケーション手段の確保や、セキュリティの制約で社外との遠隔会議ができないなどの課題も挙がった。部材の調達についても複数の回答者が言及。コミュニケーションに制約がある中で調達が遅れるという、困難な状況が浮かび上がる。
社外とのやり取りと並んで、社内のコミュニケーションに関する悩みも多かった。これまでのやり方で議論や打ち合わせ、進捗管理ができないことや、部署のメンバーの作業状況や様子が分からないことが困りごととして出てきた。顔を合わせたコミュニケーションを重視する様子も伺える。また、在宅勤務中のメンバーを心配する声もあった。社内外のコミュニケーションの悩みに加えて、仕事の環境の変化から業務が以前のように進められないことに関する悩みの声も多かった。
COVID-19の収束時期や業界の動向、需要の見通しなど、先行きの不透明さに対する不安の声も多い。その状況下で適正な投資の水準が決められないという声もある。受注や売り上げの減少など業績に影響が出ているという回答も複数見られた。
COVID-19の影響は、大企業であっても見通せていない。上場企業の多くが2020年度の業績予想を「未定」としており、業績予想を公表した中ではトヨタ自動車が売上高2割減で営業利益が8割減、日立製作所も売上高が2割減、営業利益は4割減を見込む。また、多くの企業が投資しなければならない競争領域を抱えているが、大幅な減収減益が見込まれる状況では設備投資や研究開発投資には慎重にならざるを得ない。
経営だけでなく、足元の業務にも支障が出ていることが今回の調査で見えた。例えばテレワークでなんらかの問題を抱える人や、社内外とのコミュニケーションに制約を感じる人が多いことが分かった。
ただ、テレワークでも「出社していた時と変わらないくらい業務ができている」と答えた人も一定数いたことは前向きに捉えたい。また、今回のアンケートでは、COVID-19をきっかけに考えた「理想の働き方」を尋ねる設問を用意したが、多くの人がテレワークと出社勤務を柔軟に組み合わせながら、場所や時間の制約を受けずに働きたいと回答した。
業務や事業の内容、扱う製品や必要な設備、会社から下りる予算によって、テレワークでできることに差はあるかもしれない。しかし、COVID-19による変化に対応を迫られる状況であり、多くの働く人が望んでいるからこそ、腰を据えてじっくり検討する機会にできないだろうか。MONOistとしても、その役に立てる情報を随時発信していく予定だ。
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