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トヨタの20年度販売は2割減へ、不透明な状況下で示した見通し製造マネジメントニュース

2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しを示せない企業が少なくない中、トヨタ自動車は2020年5月12日、2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しを発表した。売上高(営業収益)は前期比19.8%減の24兆円、営業利益は同79.5%減の5000億円を見込む。当期純利益などについては未定とした。

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2020年の自動車業界を見通す手がかり

 2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しを示せない企業が少なくない中、トヨタ自動車は2020年5月12日、2021年3月期の業績予想を発表した。売上高(営業収益)は前期比19.8%減の24兆円、営業利益は同79.5%減の5000億円を見込む。当期純利益などについては未定とした。

 2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)の営業利益2兆4428億円から、為替変動の影響で4300億円減、販売台数の減少で1兆5000億円減、その他128億円減となる見通しだ。台数以外の影響による増減はゼロとして設定している。

 2021年3月期の連結販売台数は、2020年3月期の895.8万台から195.8万台減(21.9%減)となる700万台を想定している。地域別の内訳は公表しなかったが、2020年4〜6月で販売台数が前年の6割、7〜9月が同8割、10〜12月が同9割、その後、前年並みに回復するという見立てだ。リーマンショック後の2009年3月期で連結販売台数が135万台減(前期比15%減)だったため、“コロナ危機”ではリーマンショック以上の影響が出そうだ。

 地域ごとの市場見通しについても触れた。「もともと経済が強く、政府の強力な下支えもある」(トヨタ自動車 執行役員の近健太氏)という北米市場は、2020年5月から徐々に都市封鎖などの制限が緩和される見通しで、工場の稼働も少しずつ再開していることから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束後、2021年の早い段階で前年並みに戻ると見ている。また、当初の低い見積もりよりも販売が上積みできているという。

 欧州も同様に2020年7月以降で回復し、2021年の早い段階で前年並みに戻るのではないかと期待を寄せる。中国では、新型車効果やハイブリッド車(HV)の好調により、2020年4月の時点で前年同期の販売を上回った。

 トヨタ自動車 社長の豊田章男氏は業績見通しを発表した狙いについて「この状況だからこそ、1つの基準を示したかった。基準を示すことで、何かしらの準備や計画をしてもらえるのではないか」と語る。また、2021年3月期に黒字を確保することで、日本自動車工業会の会長として語ってきた「自動車業界がコロナ後の経済復興のけん引役となる」という目標に向けた準備が整うとしている。また、黒字を確保できれば「これまでの企業体質強化の成果といえる」と豊田氏はコメントした。

 トヨタ自動車と同日に2020年3月期通期決算を発表したホンダや、トヨタ系を含むサプライヤー各社は、2021年3月期の業績見通しを未定としている。海外の自動車メーカーやサプライヤーも、2020年の見通しについて明らかにしていない。ただ、Robert Bosch(ボッシュ)は2020年の自動車生産について「少なくとも20%減少する」とコメントを公表している。トヨタ自動車やボッシュが言及した「前期比20%減」は、市場や業績の見通しに関する情報が少ない中で1つの目安となりそうだ。

「もし新型コロナの影響がなければ」

 トヨタ自動車とホンダは2020年3月期の収益改善について、「もし新型コロナの影響がなければ」と振り返った。トヨタ自動車の場合は、為替やスワップの影響に加えて新型コロナの減益要因を除くと、営業利益は2850億円の改善だった。近氏は「ここ数年でも大きな成果だった」とコメントした。新型コロナの影響は1600億円のマイナスで、内訳は台数減少で1000億円、金融事業の貸し倒れや残価損の引き当てで600億円となっている。

 ホンダの2020年3月期の営業利益は前期比12.8%減、927億円減の6336億円だった。しかし、為替の影響や、一過性の要因、新型コロナの感染拡大に伴う影響を除くと、コストダウン効果、販売費や一般管理費の減少などにより実質では1008億円の増益だったとしている。新型コロナの影響は1298億円のマイナスだった。

 2021年3月期は収益面がより一層厳しくなることが確実だが、トヨタ自動車もホンダも新型車や新技術などの投入計画は大きく変えない方針だ。

 トヨタ自動車は2021年末までに18車種を投入する予定だった。開発の遅れで計画が少し遅延するケースが一部あるとしているが、18車種という計画は維持する。マイナーチェンジなどの実施時期については見直すとしている。研究開発費も「やめる、やる、続ける」の観点で検証しながら投じる。会見で豊田氏は「リーマンショック後に将来への投資も全てやめたことで、体重を落としただけでなく必要な筋肉まで失った」と述べ、必要な投資を継続する意義を語った。スマートシティー「Woven City」の計画も継続する。

 ホンダも、電気自動車「ホンダe」やレベル3の自動運転車について遅れる可能性を認めつつ、2020年内に発売したい考えだ。現在、レベル3の自動運転車については性能を正しく理解して使ってもらうための訴求方法や販売の在り方を検討中だ。ホンダeは、新型コロナの影響で部品の供給に懸念があり、最終確認に遅れが出ている段階だという。次世代技術への投資も縮小は考えていないとしている。

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