三菱重工は新型コロナで民間航空機や中量産品が大幅減、SpaceJetも立ち往生:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱重工業が2019年度の連結業績や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による需要急減への緊急対策、中長期の取り組みについて説明。民間航空機向けの構造体やエンジン、ターボチャージャーや物流機器などの中量産品がCOVID-19による需要減の影響を受けており、外部流出費用の削減や先送りなどの緊急対策を進めているという。
2020年度は新型コロナ対策を含めて6つの施策を推進
2020年度の取り組み方針としては、COVID-19によって大きな影響が出ている民間航空機と中量産品関連の事業への緊急対策や、日立製作所からの株式譲渡により100%子会社となる三菱日立パワーシステムズ(買収完了後は三菱パワーに社名変更予定)を核にした収益力の拡大、SpaceJet事業の見直しなど6つの施策を挙げた。
COVID-19の影響は受注品(国内中心)を除く全ての事業で出ているが、特に大きいのが民間航空機と中量産品の関連事業だ。民間航空機の構造体は、米国ボーイング(Boeing)が生産を再開したものの生産レートが不透明なこともあり、2020年度当初計画に対して10〜30%の減少を想定している。このため、大江工場(名古屋市港区)などで操業の一時停止や一時帰休を実施している。民間航空機向け航空エンジンも、航空会社の運航減少により収益源のサービス事業が激減し、2020年度当初計画比で35〜55%の減少となる見込み。中量産品は、2019年度から続く米中貿易摩擦の影響で厳しい状況が続く中でさらにCOVID-19の影響が加わった。2020年度当初計画比では15%減少する見込みだ。
SpaceJet事業は、2020年2月に初号機納入を2021年度以降に延期することを発表しているが、COVID-19の影響により型式証明に向けた飛行試験機10号機の米国へのフェリーフライト施時期が見通せない状況にある。同社 社長の泉澤清次氏は「航空業界全体におけるCOVID-19の深刻な状況を踏まえて、引き続きスケジュールの精査を行う」と語る。また、北米市場向け主力モデルとする「M100」の開発検討についても、「検討を進めることを見合わせる。COVID-19による航空業界全体の変化を見た上で、進め方を考えたい」(泉澤氏)とした。
COVID-19を含めた厳しい事業状況にいち早く対応していくため、次期中期経営計画の策定を半年前倒し、2020年秋に発表することとした。課題事業の対策、事業運営体制のスリム化、成長戦略の推進の3つを軸に策定を急ぐ方針である。
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