将来の需要倍増に備える三菱重工航空エンジン、生産性向上を支えるシステムとは:製造IT導入事例(1/2 ページ)
BI(ビシネスインテリジェンス)ツールを提供する米Tableau Softwareの日本法人であるTableau Japanは2018年12月11日、三菱重工航空エンジンに同社製BIツール「Tableau Software」が全社的に導入されたと発表した。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを提供する米Tableau Softwareの日本法人であるTableau Japanは2018年12月11日、三菱重工航空エンジン(愛知県小牧市)に同社製BIツール「Tableau Software(以下、Tableau)」が全社的に導入されたと発表した。
Tableau Japanは同日に東京都内で記者説明会を開催し、同社社長の佐藤豊氏と三菱重工航空エンジンで経営管理部 IT戦略グループ グループ長を務める吉野一広氏が導入の経緯と事例紹介を行った。
20年後に2倍の需要が予想される航空機エンジン、生産性向上が急務
三菱重工航空エンジンはその名の通り三菱重工業グループの子会社で、三菱重工業の民間航空機エンジン事業を移管して2014年10月に発足した。三菱重工航空エンジンの民間エンジン事業では、英Rolls-Royceや米Pratt & Whitneyといったのジェットエンジンメーカーへタービンや燃焼器モジュール等を供給するとともに、防衛エンジン事業にも参画している。
航空機業界は安定した成長が見込まれており、航空機エンジン市場も年率5%程度の成長市場だ。吉野氏は「20年後には現在の2倍の機体が運行される見込みだ。この右肩上がりの予測は単に楽観的なものではなく、航空機メーカーが発表するバックログ(受注残)を注視した結果に基づいており確度はかなり高い」と語る。
同社の現時点における生産能力は、「月産で言うと燃焼器モジュールが20〜30台、タービンブレードが1万3000枚」(吉野氏)とするが、市場の伸びを勘案すると生産能力の増強は必須な状況だ。
吉野氏は、「われわれも2倍の生産能力を持たないといけないが、そのまま2倍の生産設備を持つわけにはいかない。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を活用し、サプライチェーンマネジメントの高度化とスマートファクトリー化を進めている」と同社の取り組みを語る。
そのような状況で、「自社の状態を即座に確認できる見える化と定量評価を実現するため」(吉野氏)に、同社では社内外に点在していた基幹系データベースを集約。社内の事業部門に応じたデータを即時に提供するデータベース「e-Work DB」を2015年に構築し、社内ユーザーに提供した。
この施策により、ユーザーは自身が求めるデータについて収集作業から解放されたが、吉野氏は「ユーザーが増えるたびにデータ加工を行うマクロ等のツールへの要求が多様化し、開発が困難になってきた」と当時を振り返る。そこで、「ユーザー側で自分好みのデータ加工や解析が行えるビジュアルツールが欲しかった」(吉野氏)とBIツール導入の理由を語った。
同社がTableauの導入を開始したのは2016年のことだ。導入当初は試験導入の形で少数のライセンスを購入し、グラフ作成等の業務でニーズのあった生産技術と品質保証部門に対して同ツールの説明会を実施した。導入2年目となる2017年には利用部門を全社のうち約4割にまで拡大。導入3年目となる2018年には利用部門を7割まで広げ、全社レベルでの同ツール説明会を実施したという。
吉野氏は、全社に同ツールの利用が拡大する例として、「(Tableauを未導入の)防衛エンジン事業サイドの人間が、Tableauを使える社内の人間にデータ解析を依頼したら翌日に結果が戻ってきて驚いていた。防衛エンジン事業サイドの人間もこれならウチも、という流れになったようだ」というエピソードを紹介した。
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